日本経済の中心地、東京・丸の内から“マル秘”財界情報をお届けする人気コラム「丸の内コンフィデンシャル」。月刊「文藝春秋」2023年7月号より一部を公開します。

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楽天 一難去ったが……

 楽天グループ(三木谷浩史会長兼社長)が第三者割当増資と公募増資で最大約3300億円を調達した。第三者割当増資は、サイバーエージェント(藤田晋社長)、東急(髙橋和夫社長)、三木谷氏の資産管理会社である三木谷興産など4社が合計420億円を引き受け。残りは投資家から幅広く募った。

楽天の三木谷浩史会長兼社長 ©文藝春秋

 楽天グループは19年から進める携帯電話事業の設備投資負担が重く、有利子負債は1兆7000億円を超える。これ以上借り入れや社債発行は増やせないため、傘下の楽天銀行を上場させたり、保有する西友ホールディングス株を売却したりして、有利子負債の返済に充ててきたが焼け石に水。2024年に3000億円、25年には4000億円の社債償還が控えることもあって、大型増資に踏み切った。

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 一方で、今年4月、楽天グループはKDDIから回線を借りる「ローミング」の拡大を決めた。これまでつながりにくい地方でKDDI回線を利用するものの、大都市では自前回線の整備を進めてきた。それを今後は東京23区や大阪市、名古屋市などでもKDDI回線を使うという。

 携帯電話事業で苦しむ最大の原因は、電波のつながりにくさだ。しかし現在の財務状態では基地局整備を加速することは難しい。そこで費用対効果が小さい地方に限定していたローミングを大都市圏にも拡大するわけだ。

 ここでネックとなるのが、KDDIのローミング料金。三木谷氏自身も「高すぎる」と語っているほど。それでも今回、対象地域を広げたのはKDDIが価格面で妥協したからと言われる。だが、一難去ってまた一難。

「KDDIが割り当てた周波数帯は狭く、電波のつながりにくさは解消されていない」(通信業界関係者)

 財務と事業の懸案を一気に解決したように映るが、楽天グループの苦境はまだ続く。