文春オンライン

10年前、ロッテ・荻野貴司の復帰試合で号泣していた“荻野ガール”が綴る、今も変わらぬ荻野愛

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/08/13
note

武豊騎手とロッテ選手の“偶然の出会い”

 昨年末、有馬記念が近づくある日の栗東トレセンでそれは起きました。武豊騎手に、サインをもらった紙面の読者プレゼントを持ってもらい、写真を撮った時。2、3枚シャッターを切り、お礼を伝えようとしたところ、私のスマホの背面を見た武豊騎手に「それ誰?」と聞かれました。私は2022年のブラックサマーウィークエンド(千葉ロッテマリーンズが主催している夏のスペシャルイベント)のスマホケースを愛用中。もちろん、荻野選手の写真が入ったものです。「千葉ロッテの荻野貴司選手です」と答えると、衝撃の答えが返ってきました。

「あの奈良出身の選手やろ?」

 えっ!? 大声が出かけました。レジェンドが荻野貴司を知っているだと。しかも出身地まで。武豊騎手自身がお隣の京都出身だから? ちょっと興奮しながら恐る恐る、その理由を尋ねてみました。

ADVERTISEMENT

「リハビリしてた時の先生が一緒やったんよ」。数年前、武豊騎手がけがをしていた時、同じタイミングで荻野選手も離脱中。2人のリハビリ施設が一緒で、担当の先生も同じだったそうです。それで出会ったとか。今年2月、石垣島の春季キャンプで荻野選手と話す機会があったので、その話をしてみると、「覚えててくれたんや!」と驚きの表情でした。

 偶然の出会いのきっかけはおふたりのけが……。皆さんご存じの通り、荻野選手はけがによる離脱が多く、1年間フルで一軍にいることがなかなかかないませんでした。試合途中でなぜかベンチに下がった時の不穏な予感、翌日に登録抹消の公示を見た時の絶望感……。荻野選手ファンにかぎらず、推しの野球選手がけがをしてしまった時は誰もがこのつらさを経験すると思います。なぜ私は骨折も肉離れもしないのか……。代わりに私のあばら骨が折れればいいのに……。と、よく考えました。え、私だけじゃないですよね(汗)。

 それでも、何度もはいあがって戻ってくる。七転び八起きを体現している姿に本当に元気付けられました。プロ12年目の2021年には最多安打、盗塁王のタイトルを獲得。何度壁に当たっても、それを乗り越えるどころか、もっと上へ。年を重ねるごとにどんどん進化していくところに、荻野選手の強さが表れています。

荻野貴司選手の後ろ姿 ©下村琴葉

 部活、受験、就活、仕事……。自分自身挫折しかけたときに励ましてくれたのはいつも、ロッテと荻野選手でした。なんだか精神的にヘコんだ日に限って推しの選手が活躍したり、ロッテが劇的な勝利を飾ったりして、ものすごく元気をもらえる、そういう時ありますよね? これまでの人生、何度もそれに助けられてきました。荻野選手をはじめ、ロッテの選手には感謝しかないです。今後ともよろしくお願いいたします。

 現時点で1位とは6ゲーム離れていますが(8月11日現在)、まだまだオリックスの背中は見えています。秋にはロッテの“差し切り”が決まりますように。そして全選手無事にシーズンを終えられますように。夏の夜空に願いを込めて、今日もテレビに向かっています。

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2023」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/64541 でHITボタンを押してください。

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。

10年前、ロッテ・荻野貴司の復帰試合で号泣していた“荻野ガール”が綴る、今も変わらぬ荻野愛

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春野球をフォロー
文春野球学校開講!