文春オンライン

連載シネマチャート

仲よし家族の旅行話かと思ったら…荒野を旅して辿り着いた末の“命がけの決断”とは 「君は行く先を知らない」を採点!

シネマチャート

note

〈あらすじ〉

 4人家族と1匹の犬を乗せた車が、イランの荒野を走っている。後部座席では、左脚にギプスをした父親(モハマド・ハッサン・マージュニ)が家族旅行にはしゃぐ幼い次男(ラヤン・サルラク)の相手をしている。助手席の母親(パンテア・パナヒハ)が、カーステレオから流れる古い歌謡曲に体を揺らす。神妙な面持ちでハンドルを握るのは、成人したばかりの長男(アミン・シミアル)だ。

 一家はやがて、トルコ国境近くの高原地帯に到着する。羊飼いや仮面の男との交渉を経て、長男が「旅人」としてある村に迎え入れられる。

〈解説〉

『白い風船』などで知られるジャファル・パナヒ監督を父に持つ、パナー・パナヒの長編監督デビュー作。ある目的のために、イランの荒野を車で移動する家族のロードムービー。93分。

  • 中野翠(コラムニスト)

    ★★★★★仲よし家族の旅行話かと思ったら、命がけの決断の旅なのだった。つつましい感情表現とユーモア。そして愛犬との別れ。

  • 芝山幹郎(翻訳家)

    ★★★★★ロングショットはほぼ想定内だが、情感の細部をゆるがせにしない語りが見事。寛ぎと危うさ、笑いと切なさが溶け合う。

  • 斎藤綾子(作家)

    ★★★☆☆乾いた大地の広さは見事。何もない光景の果てしなさが圧倒的で、演劇的に騒ぎ佇む家族の姿は旅の深刻さを強調する。

  • 森直人(映画評論家)

    ★★★★☆『シンプルな移動と運動に政治的な主題を数々込める。イラン映画の尖端を継承し「守破離」に向かう次世代の意志を確認。

  • 洞口依子(女優)

    ★★★★☆フレームの構成の鋭い感覚。車、顔、風景のショットには、映画監督の誕生を確信する活力が漲っている。音楽も好い。

  • もう最高!ぜひ観て!!★★★★★
  • 一食ぬいても、ぜひ!★★★★☆
  • 料金の価値は、あり。★★★☆☆
  • 暇だったら……。★★☆☆☆
  • 損するゾ、きっと。★☆☆☆☆
©JP Film Production, 2021

INFORMATION

『君は行く先を知らない』(イラン)
8月25日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
https://www.flag-pictures.co.jp/hittheroad-movie/

仲よし家族の旅行話かと思ったら…荒野を旅して辿り着いた末の“命がけの決断”とは 「君は行く先を知らない」を採点!

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー