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「平成」の次は何になるのか?――新元号が決まるまで

2018/03/26
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「平成」に内定するまでの舞台裏

 やがて昭和64年(1989)1月7日朝、天皇陛下が111日間の闘病を経て永眠されると、午前10時すぎ「剣璽(けんじ)等承継の儀」(国の儀式)により、皇太子殿下が新天皇となられた。すると直ちに竹下内閣の小渕官房長官が、かねて用意し周到に検討ずみの新元号案3つを、あらかじめ委嘱(いしょく)した有識者8名と衆参両院の正副議長4名に諮(はか)っている。

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『皇位継承 増補改訂版』(高橋 紘、所功 著)

 その結果、第1案の「平成」に全員から賛同がえられたので、午後1時すぎに開かれた臨時閣議において「平成」を新元号とする政令が決定された。それは早速、官邸から宮内庁を通じて新天皇に報告され、また政令が届くと、憲法の定める国事行為として陛下が「明仁」と親署されることで、正式に公布(官報に掲載)する手続きを完了している。

 一方、官房長官は午後2時半すぎ、官邸から「新しい元号は平成(へいせい)であります」と公表した。その際、文字の典拠として『史記』の「内平外成」(内平らかに外成る)と『書経』の「地平天成」(地平らかに天成る)とに基づき、「平」と「成」の二字を組み合せたこと、「この平成には、国の内外にも天地にも平和が達成される、という意味がこめられて」いること、これは当日(土曜日)公布するが、施行は翌8日(日曜日)午前0時からとすること、などを説明している。

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新元号「平成」を発表する小渕恵三官房長官(当時)。衆院第2議員会館で理容店を営む宮宗住江さんが髪を整えた(1989年1月7日、東京・首相官邸) ©時事通信社

新元号の施行は2019年4月1日?

 この「平成」年号は、今上陛下の高齢譲位により改められる。それは従来の崩御による場合と異り、譲位の時期が皇室会議の議を経て決まれば、早目に内定し新天皇の践祚当日、正式に公布してから施行することもできる。

 今のところ、譲位の時期は、今上陛下が父君の30年式年大祭を自ら行われうる平成31年(2019)1月7日以後、おそらく3月末日、また新元号の施行は、年度替りの4月1日だろう、といわれている。

 もしそうなれば、元号は政府の所管事項であるから、譲位・践祚に先立って、早目(平成30年春ころまで)に新元号を内定し、それを予定案として発表すれば、官庁でも民間でも新元号への切り替え準備を進めやすい。

 ただ、正式には「皇位の継承があった場合」であるから、今上陛下の譲位と皇太子殿下の践祚が実現した時点で、政府が政令を決定し、新天皇による公布の手続きをとり、それを公表する際、施行の時期を公示することになろう。

内閣総理大臣(左の安倍晋三氏)はじめ国務大臣等午餐 2018年 写真提供 宮内庁

新元号の条件とは?

 その新元号案は、政府から委嘱を受けた現存の碩学が、古典(従来すべて漢籍だが、今後は日本の古典もありうる)に基づいて考案する。

 それは「元号法」に従って定められた「改元要綱」により、(イ)「国民の理想としてふさわしいような良い意味を持つこと」、(ロ)「漢字二字」で「書きやすく読みやすいこと」、(ハ)「これまで元号などに使用されたり俗用されたりしていないこと」という条件に適(かな)う必要がある。

 これに携(たずさわ)る人々は、極めて高度な学識と精密な作業を要するが、何とぞ新しい御代の明るい灯となるような元号を選定してほしいと念じている。

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