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「監督なんて偉くも何ともない」「僕は監督“係”です」森保一(55)と栗山英樹(62)に見る組織を強くする“非カリスマ型リーダー”

『森保一の決める技法 サッカー日本代表監督の仕事論』より#2

2023/10/13
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 日本を3度目のWBC優勝に導いた栗山英樹と、ドイツとスペインを破りサッカーW杯2大会連続ベスト16を成し遂げた森保一のチームマネジメントには、ビジネスにも通じる“共通点”があった。ここでは『森保一の決める技法 サッカー日本代表監督の仕事論』より一部抜粋。“カリスマ性”に頼らずチームを強くするチーム運営の極意に迫る。(全2回の1回目/後編を読む)

©️文藝春秋

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森保一と栗山英樹。競技は違えど共通する考え方

 森保と栗山には共通点が多い。それを整理すると、次の3つになる。

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 まず、ひとつ目。2人とも監督という仕事を、あくまでもチームの中の役割のひとつととらえ、自らは、もっぱらマネジメントに専念していること。

 森保は、自らの仕事を「監督係」という。謙遜して言っているのではないことは、次の発言からも窺うかがえる。

「チームとして目標を定め、結果を求めて進んでいく中で、監督だから偉いとか偉くなるとか、そういうことはあまり大事ではない。コーチを含めたスタッフ、選手全員がスペシャリストである以上、それぞれが自分たちの特性や強みを発揮し、チームのために何ができるか、を考えながら全力を尽くす。コーチの役割としては、(第一次政権においては)オープンプレーは横内さん、セットプレーの攻撃は上野(優作)さん、守備は齊藤(俊秀)さん、GKは下田(崇)さん……と、それぞれの責任者を決めていた。僕自身が中心となってチームとしての戦い方や指導方針を共有しつつ、コーチやスタッフには、各々が良さを発揮できる環境をつくっていくこと。それが監督の仕事だと考えています」

 監督と選手は「上司」と「部下」ではなく、あくまでもフラットな関係だと森保は考えている。そこに役割の違いはあれど、貴賤や序列はないのだと。

©️文藝春秋

 監督係と聞いて、腰を抜かしそうになった指導者もいるのではないか。会社でも「係長」の肩書きは「部長」や「課長」より下で、ビジネスの世界では名刺に「係長」とあると軽んじられるのが常だ。

 スポーツの世界において、「監督」という肩書きの響きは絶大である。南海ホークスとヤクルトスワローズでリーグ優勝5回、日本一3回を達成した野村克也は「男と生まれてなってみたいものは、オーケストラの指揮者と連合艦隊の司令長官、それとプロ野球の監督」とまで語っている。

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