昨年のサッカーW杯でドイツ、スペインという強豪国を次々と撃破した日本代表。だが、森保一監督には苦しみ続けた日々があったという。ここでは『森保一の決める技法 サッカー日本代表監督の仕事論』より一部抜粋。森保監督が人知れず味わった苦悩の日々を振り返る。(全2回の2回目/前編を読む)
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代表監督解任が囁かれた日
日本代表は、カタールW杯アジア最終予選で苦戦を強いられていた。
21年9月2日、初戦のオマーン戦(ホーム)で0対1とまさかの黒星発進。10月7日(現地時間)の3戦目、アウェーでのサウジアラビア戦も0対1で落とした。3戦を消化した時点で1勝2敗、手にした勝ち点はわずかに3。この時点で日本はグループBの3位だった。
カタールへの出場切符は各グループ2枚。3位で終了した場合、プレーオフに回らなければならなくなる。そんな苦境下、もし4戦目のホームでのオーストラリア戦でも勝ち点3を取れなかった場合、解任は避けられなかっただろう。
森保は動いた。4─2─3─1から4─3─3にシステムを変更したのだ。中盤のアンカーに遠藤を起用し、インサイドハーフに守田とMF田中碧を並べた。田中に至ってはW杯予選初出場だった。
この大胆な起用が図に当たった。前半8分、田中は左からのクロスをゴール前でトラップし、右足を振り抜いた。シュートは左サイドネットを揺らし、日本が先制。後半25分にオーストラリアに追いつかれたものの、終了間際、相手のオウンゴールで勝ち越した。最終スコアは2対1。
システム変更を決断したのは、森保によると「(3戦目の)サウジアラビア戦に敗れてから」だった。オーストラリア戦後に行われたオンライン会見で、森保はシステム変更の理由を、こう明かした。
「南アフリカ大会で岡田さんは4─3─3を採用しています。実はそれをイメージしていました。岡田さんは守備の時に4─3─3から4─5─1になるようにして、サイドのスペースをケアしていました。私もアジアや世界で勝っていくためにはそこ(サイドのスペースのケア)を考えていた。攻守にわたり連係、連動し、サイドをケアする岡田さんのシステムを参考にしました」
さらに森保は続けた。