文春オンライン

「結果を出さなければ日本人指導者の評価が変わってしまうプレッシャーがあった」サッカー日本代表監督・森保一の“地獄から天国への日々”

『森保一の決める技法 サッカー日本代表監督の仕事論』より#3

2023/10/13
note

 昨年のサッカーW杯でドイツ、スペインという強豪国を次々と撃破した日本代表。だが、森保一監督には苦しみ続けた日々があったという。ここでは『森保一の決める技法 サッカー日本代表監督の仕事論』より一部抜粋。森保監督が人知れず味わった苦悩の日々を振り返る。(全2回の2回目/前編を読む)

©️文藝春秋

◆◆◆

代表監督解任が囁かれた日

 日本代表は、カタールW杯アジア最終予選で苦戦を強いられていた。

ADVERTISEMENT

 21年9月2日、初戦のオマーン戦(ホーム)で0対1とまさかの黒星発進。10月7日(現地時間)の3戦目、アウェーでのサウジアラビア戦も0対1で落とした。3戦を消化した時点で1勝2敗、手にした勝ち点はわずかに3。この時点で日本はグループBの3位だった。

 カタールへの出場切符は各グループ2枚。3位で終了した場合、プレーオフに回らなければならなくなる。そんな苦境下、もし4戦目のホームでのオーストラリア戦でも勝ち点3を取れなかった場合、解任は避けられなかっただろう。

©️文藝春秋

 森保は動いた。4─2─3─1から4─3─3にシステムを変更したのだ。中盤のアンカーに遠藤を起用し、インサイドハーフに守田とMF田中碧を並べた。田中に至ってはW杯予選初出場だった。

 この大胆な起用が図に当たった。前半8分、田中は左からのクロスをゴール前でトラップし、右足を振り抜いた。シュートは左サイドネットを揺らし、日本が先制。後半25分にオーストラリアに追いつかれたものの、終了間際、相手のオウンゴールで勝ち越した。最終スコアは2対1。

 システム変更を決断したのは、森保によると「(3戦目の)サウジアラビア戦に敗れてから」だった。オーストラリア戦後に行われたオンライン会見で、森保はシステム変更の理由を、こう明かした。

「南アフリカ大会で岡田さんは4─3─3を採用しています。実はそれをイメージしていました。岡田さんは守備の時に4─3─3から4─5─1になるようにして、サイドのスペースをケアしていました。私もアジアや世界で勝っていくためにはそこ(サイドのスペースのケア)を考えていた。攻守にわたり連係、連動し、サイドをケアする岡田さんのシステムを参考にしました」

 さらに森保は続けた。

関連記事