チームを変えた“ある人”からのアドバイス
「岡田さんからのメールで、戦術的な中盤の突き方やサイドのケアの仕方を(ホームの)オーストラリア戦後にアドバイスしていただきました」
南アフリカ大会での岡田ジャパンのシステムを参考にした森保ジャパンは、ここから4─3─3にシステムを移行し、格下のベトナム、オマーン、中国を相手に4連勝。カタールW杯出場圏内の2位に浮上した。
迎えた8戦目の相手は、アウェーで敗れたサウジアラビア。先制したのは日本だった。32分、MF伊東純也の右サイドからのクロスを、ペナルティーエリア内で受けたMF南野拓実が鋭い切り返しで相手をかわし、左足を一閃。シュートは相手GKに当たりながら、ゴールに吸い込まれた。後半5分には伊東がペナルティーエリア外から弾丸ボレーを右足で叩き込み、終わってみれば2対0。完勝だった。
これで5連勝、勢いに乗る日本は3月、シドニーに乗り込んだ。24日、スタジアム・オーストラリア。ここで勝てば最終節を残してカタール行きが決まる。
スコアレスの後半44分、救世主が現れる。後半途中からピッチに立った三笘が大仕事をやってのけた。DF山根視来、MF守田の流れるようなパスワークで右サイドを崩し、左サイドから走り込んできた三笘がとどめを刺した。さらに三笘はアディショナルタイムにもゴールを追加し、カタール行きを決めた。
地獄から天国へ──。オンラインで行われたカタールW杯出場決定会見、私は森保の次の言葉が強く心に残った。
「私ひとりで戦っているとは思っていません。常に日本のサッカーファミリー全体で普及、育成、環境づくりをしてくださっている方々と一緒に、日本代表を強くし、目標に向かっています。ただプレッシャーがひとつあったとすれば、W杯に6大会連続で出続けている中、日本人指導者として7回目を目指し、もし私が結果を出さなければ日本人指導者の評価が変わってしまうというプレッシャーがありました。世界で結果を出すというところにはまだ至っていません。しかし、アジアの中で、日本人指導者がしっかりと勝って、そして世界に挑める、世界を追い越していける──。他の指導者にも自信を持っていただき、日本人指導者全体の評価につながればいいなという思いでやってきました」
私ひとりで戦っているとは思っていません──。これも森保がよく口にする言葉だ。彼のコメントをよく読めば、「I」よりも「WE」の方が、主語にふさわしいように思えてくる。