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阿部慎之助の「僕は変わる」「僕は変わらない」発言を考察。巨人という大河ドラマ新章の楽しみ方

文春野球コラム クライマックスシリーズ2023

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勢いよく行われる血の入れ替え

 4位で終わった今年のシーズン。

 シーズン最終戦から10日が経過した現在で、監督の交代をはじめ、15人の選手と5人のコーチの退団が発表されています。

 15人の選手の中で、支配下の選手に目を向けると引退する松田宣浩選手、ベテランの中島宏之選手など40代2人、30代3人、20代後半が3人。コーチ陣で退任する5人のコーチは全てが阿部新監督より年上のメンバー。

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 目に見えて感じ取れるのは世代交代という変化。チームの平均年齢はどんどんと若返り、1986年生まれの僕にとっては長野久義選手を除いて全員が年下に。

 年齢とともに趣味や嗜好が変わってくるのが人生。とくに同じチームを愛し続けているとそれが顕著にあらわれます。

 僕自身も今のジャイアンツで考えると、学生の頃までであれば圧倒的に岡本和真選手のようなスターに胸を躍らせ、応援していたと思います。

 それが20代の頃になると戸郷翔征投手や、秋広優人選手に浅野翔吾選手のような若手選手に未来を見ては自分に重ねていたと思います。

 それが30代半ばの今では、ベテラン選手や不調にあえぐ選手による復活劇に感動しては土壇場での踏ん張りを学びたいと考えています。

 今シーズンは名前がコールされるだけで地鳴りのような歓声を呼び込んだ長野選手の打席は、かなり力を入れて見ていました。

 怪我で出遅れるも復活してから必死に一戦一戦投げていた菅野智之投手の登板も、勝っても負けても感情を揺さぶられました。

 ロックしか聞かなかったキッズは楽しくJ-POPをカラオケで歌えるようになるし、韓流スターを追っかけていたマダムが気付いたら純烈ライブにたどりついしまうことだってあるんです。

待望の船長就任、いざ出航の時

 監督に就任し迎えた秋季練習の初日。阿部監督はこのように語りました。

「僕も変わりますし、みんなも変わってほしい。のびのびとやってほしいと思います」

 選手時代には澤村拓一投手の頭をポカリし、2軍監督時代には罰走を命じ、昭和な一面を見せてきたものの時代の流れに合わせて、変わる覚悟を口にしたのです。

 思えば選手時代も毎年微妙にバッティングフォームが変わっていたと思います。体型の変化も凄まじかったです。入団時83キロと言われていた体重は、100キロ近くにまで増量。これが怠惰によるものではないということは、2000本安打や400本塁打という記録を見れば一目瞭然。

 変化を恐れずいいと思ったものは取り入れる性格であることが見て取れます。

 一方で、このようにも語っています。

「みんな一緒にやってきた仲間だし、僕自身はこれまでと変わっていないので、みなさんよろしくお願いします」

 変わることと変わらないこと。

 相反するこの2つは、ジャイアンツに限らずあらゆる組織や場面でバランスと見極めが非常に重要になってくるでしょう。

 僕の所属する純烈では、グループとしての方向性や指針などは基本的にリーダーが決めます。そして、各個人の持ち場の中での判断は各自に任されているわけです。

 チームでありながら、それぞれの選手は個人事業主であるというプロ野球と似ている側面があるように感じます。

 上記の阿部監督の話を聞いて「変わると言ったり変わらないと言ったりブレているなー」というコメントを目にしたりもしましたが、個人的にはその意見には反対です。

 人間同士の勝負に絶対不変というものはあまりないと思います。強い相手が現れたら今の自分を変えなくては勝てない瞬間がある。

 逆に今の自分を応援してくれている人を大事にするためには、なるべく今の状態をキープする必要がある。

 自分自身が純烈として15年間、試行錯誤してきたことと同じ方向性と思えることを阿部監督が語ったのを見て非常にうれしく思いました。

 監督も選手もファンも目指す先は一つ。

 今船出した新生ジャイアンツがたどる変化と守り抜いていく伝統、その先にある強いジャイアンツの復活。

 一ファンとして大河ドラマ「ジャイアンツ」の新章を心ゆくまで堪能したいと思っています。

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