きょう3月23日は、写真家の梅佳代の誕生日だ。1981(昭和56)年石川県生まれの37歳。大阪の日本写真映像専門学校に在学中、2000(平成12)年に〈男子〉、翌01年に〈女子中学生〉でキヤノン写真新世紀佳作を受賞。卒業後は東京に移り、写真家として本格的に活動を始め、06年には初の写真集『うめめ』を出版。ベストセラーとなると同時に木村伊兵衛写真賞(07年)を受賞した。昨年(17年)には、東日本大震災で被災し、栃木県から東京都内の仮校舎に移った男子校の生徒たちの写真集『ナスカイ』を、同校の廃校を機に刊行している。

梅佳代 ©原田達夫/文藝春秋

 カメラを最初に持ったのは中学生のとき。最初は友達と写真を撮り合ったりしていたが、みんな下手なので、あるときから自分が撮ると言って、急に画角などにこだわり出したという。ただし、当時はまだプロになるつもりはなかった。それが写真学校に進んだのは、高校3年のときに進路希望として「イチローと結婚すること」を挙げたのがきっかけだった。先生からは「無理や」と言われながらも、どうすれば夢を実現できるか考えた末、野球雑誌のカメラマンになればイチローに会えると気づいたのだとか。

 梅佳代の作品は、男子小学生たちを生き生きと写しとった前出の『男子』(写真集は2007年刊)や、実家の祖父と飼い犬をそれぞれモデルにした『じいちゃんさま』(08年)、『白い犬』(16年)など、日常の何気ない、それでいてどこかおかしな光景を切り取ったところに人気がある。ある対談では、家族やペットなどを撮影するときのアドバイスを求められ、《撮り方よりも、撮った後に人に見せるとして、どれを選ぶかというセンスだと思うんです。いまはスマホで写真自体は何枚でも簡単に撮れるんで》《とにかく写真を人に見せる際は、選ぶときに冷静さとサービス精神を大事にしたほうがいいと思います(笑)》などと答えている(『週刊文春』2017年2月9日号)。彼女の写真が共感を集めるのも、まさにそのセンスとサービス精神ゆえだろう。