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「外出するのも、風呂に入るのも面倒だ…」“1日5食”生活を続ける20代フリーターを襲った「恐ろしい病」の正体

『底辺駐在員がアメリカで学んだ ギリギリ消耗しない生き方』より #1

2023/11/11
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 仕事を辞めてからは、家賃を節約するために一旦実家に身を置きました。

 親のお金で大学に行き、社会に出た20代半ばの野郎が、「体が辛いから仕事を辞めた」と言って実家に戻ってくるなど、世間一般ではあり得ないことだと思いますので、両親はよく許してくれたものです。

 仕事のストレスから解放されれば体調も戻るだろうから、就職活動も体調が戻ってから始めようと考えておりましたが、当時の私はホントにダメ人間でございましたので、一旦仕事のストレスのない生活に慣れ、甘い汁を味わってしまいますと、なかなか普通の生活には戻れません。

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 子どもが風邪をひいて学校を休むと、やがて行くのが億劫になり休み癖がついてしまうのと同じで、絵に描いたようなぐうたら生活から抜けられなくなっていきました。

 両親が仕事に行って誰もいなくなった昼頃に起き出し、テレビを観ながら好きなものを食べたいだけ食べる。しかも、1日5食。本能のままに過ごす生活は、飛ぶような速さで一日が終わっていきます。

 また、そうした自堕落な生活をしておりますと不思議と何もかもやる気が失せていくもので、再就職活動はもちろん、外出するのも、風呂に入るのも、果ては着替えるのや体を起こすのさえ面倒になってしまうものなのです。

 家の中で動かなくなると、少しでも動くと疲れるようになり、ますます不健康になるという悪循環で、再就職からはどんどん遠のいていきました。

 あのままの状態が続いていたら、テレビ番組の「8050問題」として取り上げられても、まったくおかしくなかったと思います。

 自分でボーダーラインを経験したから痛感いたしますが、社会とつながっていられるか、引きこもってしまうかの境目は、本当に紙一重。

 こうして仕事ができるようになったのは、ある出来事が起き、自分の人生を反省したからでございます。

 その出来事は、何の予兆もなく、やってきました。

 朝起きようとすると、首から下が麻痺していて、体がまったく動かないのです。

 ある朝目覚めると、自分が巨大な虫になっていたというフランツ・カフカの小説『変身』ではありませんが、自分に何が起きているのかわからないのは、恐怖でしかありません。

不健康な生活で病気を引き寄せてしまった話

 当初、両親はすぐに良くなるだろうと考え、あまり心配していなかったようです。ところが1日以上一人でお手洗いにも行けず、まったく動かない私を見て、「流石にこれはただごとではない」と感じたようで、体が動かなくなって24時間以上経ってから病院に連れていかれた次第でございます。

 父親に背負われて病院に向かい、検査、即入院となりました。

 20代半ばの男が親に背負ってもらうのは、とてつもなく恥ずかしく、悲しく、情けなく、そのときの気持ちは今も忘れることができません。

 病院での検査結果は、甲状腺機能亢進症の一つ、いわゆるバセドウ病です。

 入院時の体重は、わずか53kg。身長175cmの私の適正体重をBMI(Body Mass Index)計算式を使って求めますと67.38kgとなりますから、53kgはかなりの低体重状態でございます。

写真はイメージ ©getty

 その頃の私は1日5食の超大食い生活をしていたこともあり、自分が痩せているとか、ましてや病気を患っているとは思ってもおりませんでした。

 しかし、安静状態で血圧は上が200超、脈拍は1分間に120超の頻脈ですから、常にジョギングしているような状態が続き、体重が知らず知らずのうちに落ちていたのです。

 別の言い方をしますと、カロリー消費量が異常で、代謝がめちゃくちゃ良い状態になっていた、ということです。ダイエットされている方からは羨ましいと思われるかもしれませんが、なんでも行き過ぎると危険なものでございます。

 ちなみに、朝起きたときの体の麻痺も、この病気の特徴でございます。麻痺はすぐに良くなり退院できましたが、安静時=ジョギング状態、徒歩=全力疾走くらいに感じる体力の消耗は、通院しながら治療していくこととなりました。

「外出するのも、風呂に入るのも面倒だ…」“1日5食”生活を続ける20代フリーターを襲った「恐ろしい病」の正体

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