アメリカ生活30年近くとなるエッセイストの渡辺由佳里さん。夫であるデイヴィッドさんの仕事の関係から、「世界一のカリスマ人生コーチ」の講演に招かれ参加することに。
会場には熱気に満ち溢れた7000人の参加者や、大物ハリウッド俳優夫妻の姿がありました。多くのアメリカ人が熱狂する驚きの講演内容とは? 新刊『アメリカはいつも夢見ている』より一部を抜粋。(全3回の2回目/#1、#3を読む)
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「世界一の大金持ち」は誰か?
「フォーブス」誌によると2020年の「世界の富豪」リストの1位はジェフ・ベゾスで、ビル・ゲイツは2位の地位を維持した。3位はフランスの富豪ベルナール・アルノー一家で、ウォーレン・バフェットは4位に下がった。2021年3月13日の「リアルタイム・ビリオネアズ・リスト」のトップ10は、ベゾス(米)、イーロン・マスク(米)、アルノー(仏)、ゲイツ(米)、バフェット(米)、マーク・ザッカーバーグ(米)、ラリー・エリソン(米)、ラリー・ペイジ(米)、セルゲイ・ブリン(米)、ムケシュ・アンバニ(印)であり、アメリカ人が8人を占めている。
彼らに代表されるスーパーリッチが増えている一方で、アメリカの一般人の給料はさほど上がっていない。2018年時点での1家族あたりの平均世帯所得は630万円程度だ。それなのに大学の学費は上がり続けている。
2020年のハーバード大学の学費は4800ドル(約500万円)だが、寮費と教科書代などのコストを加えると1年に約800万円かかる。ハーバード大学があるマサチューセッツ州では、私たち夫婦のような自営業は医療保険料として月額23万円ほど払わなければならない。
日本の国民健康保険とは異なり、収入によって保険料は変わらない。すでに高額な保険料なのに毎年さらに上がるので医療保険に加入していない「無保険者」もかなりいる。
高額の学費を払って良い大学に行っても、学費ローンを返済できる高収入の職に就ける保証はない。たとえ優良企業で良い仕事に就いても、ミドルクラスの者は失業や病気で簡単に貧困層に転げ落ちてしまう。アメリカでミドルクラスが消えて貧困層に属する国民が増えているのには、こういったシビアな背景がある。
経済格差社会が平穏に継続するのは不可能なので、特にリベラルの政治家たちが医療保険の改革や大学の学費ローン債務免除などの改善策を提案してきた。ジョー・バイデン大統領が選挙の公約にしてきた富裕層や企業への増税もそのひとつだ。選挙中の現場取材でも、多くのアメリカ人が経済格差社会への怒りを語っていた。