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 私の夫のデイヴィッドは、ロビンズからの依頼で2014年から彼のビジネスセミナー「ビジネス・マスタリー」のレギュラー講演者になった。その関係で、「あなたもUPWをぜひ体験してみてください」と2015年3月に夫婦一緒に招待された。

 3月にニュージャージー州で開催されたUPWの初日は交通がストップするほどの大雪になった。それにもかかわらず会場は満員で、7000人の熱気が充満していた。

 私たちの席はステージ脇の招待者専用コーナーに用意されており、アクティビティでパートナーになったのはアメリカ最大級のファミリーレストランの創業者夫婦だった。イベントが始まったときには私の左側にある席がまだ2つ空いていたのだが、会場が暗くなってから警備担当者が連れてきたカップルを見て驚いた。ヒュー・ジャックマン夫妻なのだ。

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ハリウッド俳優のヒュー・ジャックマン氏。近年の代表作は『LOGAN/ローガン』『レミニセンス』など(インスタグラムより)

7000人を熱狂させるロビンズの言葉

 周囲の人たちも静かに驚いていたようだが、ジロジロ見つめるようなことはしなかった。舞台に現れたロビンズは2メートルを超える巨人だった。スポットライトに照らされた彼は、オーラに取り囲まれているような存在感がある。

「仕事でも愛情でも、すべてに劣悪、まあまあ、優秀、と多様なレベルがある。君たちにはずっと夢見てきた高いレベルがあるはずだ。夢のようだが、それは実際に存在する。けれども、あらゆることを試みたのにうまくいかない。努力しているのに、何度も、何度も壁にぶち当たる。そんなとき、頭の中で『どうせ、できっこないさ』というささやき声が聞こえてくるんじゃないか?」

 ロビンズが語りかけると、それまでざわついていた7000人の観客は息をひそめて次の言葉を待つ。

「もがいている現在の位置から達成まで100万マイルもの距離があるように感じるはずだ。けれども、事実はそうじゃない。ふつうは、そこから勝利までたった2ミリメートルしか離れていないんだ」

 優しく語りかけていたロビンズの声のボリュームがしだいに上がり、舞台を動き回るペースが速くなる。コートを着ないと凍えそうなほど寒い会場なのに、黒い半袖Tシャツ姿の巨人の顔には汗の粒が光り始める。

「エクセレントからたった2ミリメートルしか離れていないこのレベルのことを何と言うか知っているかい?」

 7000人が、熱に浮かされたように10分前にロビンズから教わった言葉を繰り返す。

「それはアウトスタンディングだ!」

 ロビンズは観衆を見渡し、ふたたび畳み掛けるように尋ねる。「2ミリしか離れていないこのレベルは何と呼ぶんだい?」

 観客はさっきより大きな声で叫ぶ。

「アウトスタンディング!」

「たった2ミリしか離れていないのに、エクセレントなレベルの多くの人がそこで諦めてしまう。だが、ここに集まった誰もがアウトスタンディングのレベルになれる」

 観客はロビンズの動きを目で追い、言葉のすべて拾おうとする。会場の前から7000人を振り返って見ると、まるで催眠術にかかっているような不思議な光景だ。