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2022/04/30

名物・焼けた炭の上を歩く「ファイアーウォーク」

 ロビンズのUPWセミナーの名物は、真っ赤に焼けた炭の上を歩く「ファイアーウォーク」、つまり「火渡り」である。達成や幸せを妨げている「恐怖」に真っ向から立ち向かって乗り越えることのメタファーなのだそうだ。

 私は「成功」には興味がないし、怖がりなので、参加前には「火渡りなんか絶対にしない」と宣言していた。だが、火渡りイベントの寸前にロビンズが私たち夫婦を含む少人数だけをステージ裏に招待して会場に先導してくれたので、逃げられなくなってしまった。

 参加者たちの羨望の眼差しに晒されながらロビンズに耳元で「芝生の上に立って。セイ・イエス!」とささやかれた私はすっかり舞い上がってしまい、怖がっていたことを忘れてしまった。気づいたら、すでに真っ赤な炭の上を歩き終わっていた。私とは異なり、ファイアーウォークをした人の多くは「マインドセットさえ変えれば、なんでもできる」という実感を得たようだ。「ちょっと水ぶくれできちゃったけれどね」と言いながらも嬉しそうにしていたのは、「挑戦するときにはこの程度の失敗は起こる。でも、想像したほど怖いことではなかった」という体験が自信に繋がったからだろう。

アメリカン・ドリームが滅びない理由

 ロビンズのセミナーを支えているのは、膨大な数のボランティアだ。以前このセミナーに参加して人生を大きく変えた人たちが、会場係などで無料奉仕をしているのだ。彼らは、チケット代を払って参加した人たちに、あちこちで「私はこうやって人生を変えた」、「セミナーに参加したときには無一文だったのに、事業を始めて今では年商数百万ドル」という体験談をシェアしている。

 参加者にランダムに声をかけて尋ねたところ、参加の動機は「キャリアを変える勇気を得たい」「中だるみしている事業を活性化させたい」「ぎくしゃくしている夫婦仲を改善したい」といった具体的なものから、漠然と「成功したい」というものまでいろいろあった。でも、ここに来ることで「人生を変えたい」という渇望は同じだ。

 会場の熱気には宗教的な雰囲気もある。ロビンズが実現した「アメリカン・ドリーム」を実現するために約8万円から30万円(音楽コンサートのように席や特典によってチケット代は異なる)払って参加した人は、ロックファンのようなものであり、ロビンズ教の信者といえるかもしれない。

「ここに来る前は奇妙な宗教じゃないかと眉唾だったが、想像とはまったく異なり、得るものが多かった」と答えた人がいる一方で、「こんなに払ったのに何も得るものはなかった。損をした」という人には会わなかった。個人的には、ここが最も興味深かった。

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