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「世の中の男は皆、女をゴミとしか思ってないでしょって」中3で父に捨てられ、他人と同居…米軍基地で生まれ育ったラッパー・MARIAが語る、壮絶な生い立ち

MARIAさんインタビュー#1

2023/12/17
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 SIMI LABのメンバーとして、また、『高校生RAP選手権』の審査員としても知られるラッパーのMARIAさん。米軍基地で育ち、複雑な家庭環境や「ハーフ」というルーツに葛藤を抱えたこともあるという彼女は今年4月、母となった。

 新たなステージに入ったMARIAさんに、子育て中の現在からラッパーを目指した原点まで、話を聞いた。(前後編の1本目/続きを読む)

MARIAさん

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「◯◯ちゃんママ」になってしまうことに抵抗があった

MARIAさん(以降、MARIA) あ、ワンピース後ろ前に着てた。

――え、気づきませんでした。とっても素敵です。

MARIA なんか首まわりが苦しいと思ってたんだよね。わからないなら、ま、いいか。

――23年4月に出産をして、その2ヶ月後にはパフォーマンスを披露されていました。かっこよかったです。

MARIA 正直あれはキツかったですね。産後の体力低下がヤバくて、息が続かないんですよ。

――産前と産後で書くリリックも違いますか。

MARIA ホルモンのバランスが崩れているせいか、言葉が出てこないんですよね。赤ちゃん抱っこしながらiPhone片手に歌詞書いて、「YO YO YO」とかやってたんで、子どもからしたら「なんじゃこりゃ」だったんじゃないですかね。

 

――ヒップホップを子守唄にすることもありますか。

MARIA うーん、寝てくれたといえば、よく赤ちゃんが眠れると話題の、反町隆史の『POISON』は生後1、2ヶ月くらいまでは効果ありましたね。

――子育て雑誌の『たまひよ』とか『VERY』は読みますか。

MARIA 全然読まないです。

――子どもができてもペースを変えずに仕事をしたい、みたいな思いはありました?

MARIA 産後直後までは、子どもを理由に仕事の機会を逃したくない気持ちが強かったんですけど、今はそうでもないですね。

孵化するまで卵を守り抜く「母タコ」に共感しちゃって…

――気持ちが変わったのはどうしてでしょう。

MARIA 結婚すると、女の人の多くが今までの名字がなくなってしまって、子どもを生むと今度は「◯◯ちゃんママ」になって……みたいな、自分がなくなっていくことにずっと抵抗があったんですよね。でも、今は「◯◯ちゃんママ」って言われることが嫌じゃなくて。

 あの、タコっているじゃないですか。

――吸盤のある、あのタコですか?

MARIA そうです、海のあのタコなんですけど、タコって、生涯で一度しか交尾しないらしいんです。で、役目を果たしたオスはすぐ死んじゃうけど、メスは自分の体を酷使して、孵化するまで卵を守り抜くんです。海の生き物でメスが子育てするって珍しいらしいんですけど、母タコも、無事に卵から子どもが生まれたら、それを見届けて死んでいくんですよ。