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ニュース以外でどこまで知ってる? コメディや日本人ジャーナリストによるドキュメンタリーも<パレスチナ問題を知るための映画 ベスト5>

2023/12/13

source : 週刊文春CINEMA 2023冬号

genre : エンタメ, 映画, 国際

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 10月7日に突然起きた、パレスチナ・ガザ地区を拠点とするイスラム組織ハマスの越境攻撃。そして対する「自衛」と呼ぶには激烈なイスラエルのガザ攻勢。ハマスの奇襲は明確な戦争犯罪で、西側諸国もイスラエル擁護の姿勢を崩さない。

 しかし、この事態は「突然」起きたのだろうか? 背景には、イスラエルの東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区と、ガザ地区の「占領」という歴史がある。

自爆テロに向かう青年2人の葛藤

『パラダイス・ナウ』(2005)は、占領状態に絶望し、自爆攻撃の実行者となった2人の青年の葛藤を描く。爆弾を身に着け、イスラエルに潜入した彼らの作戦は未遂に終わる。

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『パラダイス・ナウ』 ©AUGUSTUS FILM/RAZOR FILM PRODUKTION GMBH/LUMEN FILMS/MURPHY, SEAMUS/Album/共同通信イメージズ

 1人は安堵して戻り、1人はそのまま街をさまよう。戻っても現実は変わらない。たとえイスラエルがハマスをせん滅しても、占領が続く限り次の攻撃者を生むだけでは? そんな問いが生まれる。

イスラエル在住のパレスチナ人青年が主人公のコメディ

 パレスチナ人はイスラエル国内にも住んでいる。ただし、二級市民として。『テルアビブ・オン・ファイア』(2019)は、そんな境遇の青年が主人公。

 イスラエルでも人気のパレスチナ製TVドラマの言語指導係を務める青年が、検問所のイスラエル軍人に「自分は脚本家」と嘘をつくことから始まるコメディだ。

 軍人に押しつけられたドラマのアイデアによって本当に脚本家となった彼は、やがてドラマの展開をめぐり軍人(イスラエル)と制作陣(パレスチナ)の板挟みになる。

 パレスチナ問題をコメディで描く見事な脚本が高く評価された。

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