イスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃は、まさに世界を震撼させた。
10月7日に始まった大規模攻撃に、イスラエルは、激しい空爆で応酬した。ハマスもロケット弾を発射し、双方の死者は、すでに1万人を超えた。イスラエルは、ガザ地区で軍事行動に入り、犠牲者は増え続けている。
中東での争いの背後に存在する“大国の影”
一方、アラブ諸国で反イスラエルのデモが起き、イランは、ハマスを支持する姿勢を見せる。中東全域で緊張が高まり、憎しみの連鎖と言う他はない。
だが、これを、「アラブ人VSユダヤ人」という構図だけで見るべきではない。過去、中東で繰り返された戦いには、石油権益を持つ大国、米国の影があった。そして、かつてアラブとイスラエルが衝突した際、米国は、軍事侵攻し、油田地帯を占領しようとした。それを察知したアラブは、自らの手で油田を爆破すると脅す……。
機密解除された英米政府のファイルは、世界を破滅に追い込みかねない悪夢のシナリオを示す。
それは、ちょうど50年前、1973年9月14日、英国政府への警告で始まった。ロンドンに滞在中のある日本人男性が、英外務省に、一通のレポートを送った。
「複数の信頼できる情報に基づき、エネルギー問題、特に中東産油国の緊迫する情勢についてお知らせしたい」
作成したのは、右翼の黒幕、国際的フィクサーとして知られる田中清玄だった。
戦前、日本共産党の委員長となり、武装闘争を指揮し、逮捕、投獄された。その間、母の自殺を機に、共産主義を捨て転向した。戦後は、海外の石油事業などを手がけ、日本にいくつも油田権益をもたらす。山口組3代目の田岡一雄組長をはじめ、アラブ首長国連邦の初代大統領ザーイド、欧州の名門ハプスブルク家当主のオットー大公、中国の鄧小平らと個人的親交を持った。
私は、「田中清玄 二十世紀を駆け抜けた快男児」を書いた時、英米政府のアーカイブで、彼に関する大量のファイルを入手した。そこで、田中が、ハプスブルク家や欧州、アラブの要人から、国際情報を得て、国内外の友人に伝えていたのが分かった。