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「不当な圧力が無期限に続くようなら、米国は、取るべき対抗手段を検討せざるを得ない。それは、極めて不本意であり、そうした事態にならないよう望んでいる」

 そして、後年の回顧録では、こう述べていた。

「これは、口先だけの警告ではなかった。私は主要省庁に命じて、禁輸が続いた場合にOPECアラブ諸国に対してとるべき対抗措置を多方面から検討させた。月末には、いくつかの緊急計画書ができ上がった」(「キッシンジャー激動の時代」第3巻)

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 たしかに、口先だけではなかったようだ。当時の米政府文書を読むと、いくつも痕跡が見つかるのだ。

「世界を、2000万のベドウィン族のなすがままにさせられん」

 例えば、11月26日、国務省の会議で、発電用燃料の逼迫が指摘された。ここで、キッシンジャーは、「アブダビに侵攻できないのか」と発言した。その3日後には、ホワイトハウスで、アラブとの交渉が話し合われる。その場で、シュレシンジャー国防長官が、「海兵隊を使うことを話し合ってきただろう」と述べた。それに、キッシンジャーは、「軍を動かす前に、計画を立てておかねば」と応じている。

 また別の会議でも、キッシンジャーは、「世界を、2000万のベドウィン族のなすがままにさせられん。われわれは、偉大な国だ。たまたま彼らは、(石油という)希少資源を握っているだけなのだ」と語った。

 こうして見ると、米政府が、中東への軍事侵攻を真剣に考えたのは、間違いない。世界最大の軍隊を持ちながら、アラブに翻弄されることへの不満がありありと伝わる。

 そして、米国には、もう一つ、中東に介入せざるをえない理由があった。