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女性の不調を「更年期の症状」とだけ診断してしまう…"男性基準"の医療では見落とされやすい深刻な病気

source : 提携メディア

genre : ライフ, 医療, ヘルス

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妊娠可能な女性は薬物治験の対象から外されてきた過去

性差医学が提唱される前までの医療分野は男性基準が多く、生殖器以外は「女性は小型の男性」という扱いをされてきました。その背景に、女性が薬物治験の対象から外されてきた過去があります。きかっけになったのは、アメリカで1960年代に起こったサリドマイド薬害事件。妊娠初期に服用した薬の影響で出生児に奇形が起こったことから、妊娠の可能性がある女性は薬物治験への参加が禁止されました。

成人の薬物治験は一般的に19~64歳までの人で行われますが、「妊娠可能な女性を入れない」となると月経のある19~50歳くらいまでは除かれ、50~64歳までの主に閉経後の女性しか対象になりません。治験を行う際に男女割合についての明確な規定はなく、必ずしもその比率が公表されないため、最終的に「ヒト」という対象でくくられてきました。

母子を守るために非常に大事な通達であった一方で、長年薬物治験の対象が男性に偏ってしまうことになりました。そのため海外でも日本でも、結果としてさまざまな基準が男性となり、女性に現れる症状や効果的な治療はその陰に隠れてしまったのです。現在は市販前後の副作用調査などでも、性差の視点が導入されはじめています。

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更年期症状を訴える「4人に1人」に更年期症候群と別の疾患

性差のある病気があるにもかかわらず、女性の不調の多くは更年期障害やPMS(月経前症候群)など女性ホルモンの影響によるものとされがちです。特に女性ホルモンの急変動によって起こる更年期障害は、心身に多種多様な症状が現れます。そのため医療機関を受診しても「更年期の症状でしょう」と診断されることが多く、その背景に隠れている重大疾患を見過ごされるケースがあります(図表1)。

また、受診する女性側も不定愁訴=更年期かもしれないという思い込みがあったり、多岐にわたる症状をうまく整理して医師に伝えられなかったりします。何が重要な訴えなのか、医師の見極めが難しくなり、結果として更年期障害と診断されてしまいやすいのです。

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