医師であり、日本最大級の性を語るオンラインコミュニティを主宰する富永喜代氏の調査によると、これまでの人生で「最高のセックス」を経験した年代は60代が最多だったという。年齢を重ねると、性欲が減退するイメージが広く共有されている一方で、このような結果が導き出されたのはなぜなのか。
ここでは、富永氏の著書『女医が導く 60歳からのセックス』(扶桑社)の一部を抜粋し、中高年の性事情の実情を紹介する。(全2回の1回目/続きを読む)
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女性も「性的な成熟」は熟年になってから
中高年になって、人生最高のセックスを迎えるのは、なにも男性に限った話ではありません。女性も、熟年になって精力的に性生活を楽しんでいる人はたくさんいます。
年齢を重ねると女性の心と体は、若い頃とどのように変わるのか? 性欲に変化はあるのか? それらを理解する上でカギとなるのが、「女性ホルモン」です。
女性は中高年になると卵巣の機能が停止し、閉経を迎えます。閉経は「最後に月経があってから、1年間、月経がないこと」と定義され、閉経を挟んだ前後5年の10年間が「更年期」といわれます。閉経も更年期も、「今日、閉経を迎えた」と明確にわかるものではなく、あとから振り返ってみないとはっきりとわからないものです。
更年期障害で「もはやセックスどころではない」と考える女性も
女性が更年期に差しかかると、それまで卵巣から分泌されていた女性ホルモン、エストロゲンが激減します。エストロゲンは排卵や月経を引き起こし、妊娠に必要な子宮の環境を整える役割のほか、関節、骨筋肉、肺、心臓、血管、さらには感情、自律神経の働きなど全身の至るところに関わるホルモンです。エストロゲンが急激に減ることで、めまいやホットフラッシュ、不眠、性交痛や性欲低下などの症状が出ることもあります。これらを総称して更年期障害と呼びます。
更年期障害には個人差がありますが、なかには腟粘膜が薄くなったり、濡れづらくなる、セックスで挿入されると痛みを覚えるなど、性交時に不快な症状や痛みが重なり、「もはやセックスどころではない」と考える女性も少なくありません。もちろんセックスは義務ではないため、挿入のあるセックスをしなくても何の問題もありません。