Netflixの恋愛リアリティショー「あいの里」が人気を博しているが、本作では50・60代など“熟年の恋愛”にスポットが当てられている斬新さも見所のひとつとなっている。
中高年の性生活に特化したYouTubeチャンネルで人気の富永喜代氏は、新刊『女医が導く 60歳からのセックス』(扶桑社)のなかで、「熟年には熟年の恋愛やセックスの作法がある」と語るが、一方で、「ソロキャンプ中の女性に執拗につきまとう」「純愛と称してハラスメントを繰り返す」など、異性と適切な距離感を保てない中高年も社会問題化している。
彼らの暴走はなぜ生まれるのか? その理由を、富永氏の著書から抜粋・編集してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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年齢を重ねるごとに否応なく他者との接触機会は減少
私の主宰するオンラインコミュニティ「秘密の部屋」では、日夜、中高年の方々によって性にまつわる熱心な議論が交わされていますが、彼ら彼女たちの「性の悩み」の上位にランクインしたのは、「セックスレス」「パートナー探し」、つまり「他者との肌の触れ合い」自体が失われてしまっていること。これは中高年の性にまつわる、ひとつの大きなテーマです。
生まれたばかりの赤ちゃんや幼い子どもは、両親や周囲の大人たちから「かわいいね」などと声をかけられながら、いつも誰かに触れられています。神経学的な見方をすれば、赤ちゃんは肌の感覚神経に常に刺激を受けているといえます。
ところが大人になってみると、どうでしょう。恋人やパートナーでもない限り、周囲の人たちから優しく触れられたり、抱きしめてもらう機会はほぼなくなります。社会全体でセクハラの規定も厳しくなってきている昨今では、下心があろうとなかろうと他人に許可なく触れることは憚(はばか)られます。つまり、年齢を重ねるごとに否応なく他者との接触機会は減ってくる、これが現代社会の実情です。
人と触れることは精神的にリラックスできる作用がある
そこで昨今、問題化しているのが「スキンハンガー」(skinhunger)です。英語でskinは「肌」、hungerは「飢え」、つまりスキンハンガーは「肌のぬくもりへの飢餓感」とも和訳されます。
私たちの体では、肌と肌が触れ合うことで愛情ホルモンの異名を持つ「オキシトシン」が分泌され、安らぎや幸福感、相手への信頼、絆を感じるようになります。オキシトシンは心理的なストレスを感じたときに分泌されるストレスホルモン「コルチゾール」の作用を低下させ、このオキシトシンが十分に分泌されていると自律神経が整います。すると今度は、「今日も頑張ろう!」と前向きな気分をもたらしてくれるホルモン「セロトニン」の分泌が促進され、相互に作用することでストレス緩和につながっていきます。
つまり、医学的見地から見ても、人と触れることは、絆を深め、精神的にリラックスできる作用があると考えられます。もちろんこれは、男女を問わずです。