厚生労働省が2017年に発表した統計によると、日本人の平均寿命は男性「81.09歳」、女性「89.26歳」と、過去最高を更新し続けている。「人生100年時代」と言われるなか、「QOL(生活の質)」の向上は、現代人にとってますます重要な課題となっている。中でも性生活は、人間らしい暮らしを送る上で避けて通れないテーマだろう。人は何歳までセックスできるのか――かつて「週刊文春」で話題を呼んだ本企画は、これからを生きる現代人にとっても示唆に富む。あらためてここに公開する。
※「週刊文春」2012年7月19日号より転載。記事中の年齢や日付、肩書き等は掲載時のものです。
70歳以上で性生活のある女性は多い
医師は患者の症状から、意外な生活習慣を知ってしまうことがある。
2005年、女医の集団による「横浜元町女性医療クリニック・LUNAグループ」をオープンした泌尿器科医の関口由紀理事長のもとに、ある日、80代の女性が訪ねてきた。見た目は80代とは思えぬ若さだが、彼女の訴えは尿漏れだった。加齢によって起きやすくなる症状である。
ところが、いつ尿漏れが起こるのかという話になった時だ。80代の女性はこう打ち明けたのである。
「性行為の最中」
前章で紹介した東洋医学の「腎気の周期」でいえば、女性は49歳で生殖能力の限界に到達するはず。生殖能力と性欲は関係ないのだろうか。
関口氏が言う。
「私がまだ女性の性機能について勉強をする前は、閉経の前後から性行為をする女性は減り、60歳前後でしなくなるものと思っていました。しかし、性機能障害について研究し、診察を始めると、70歳以上で性生活のある女性は案外多い。なかなか自分のセックスについて相談する機会のない彼女たちは、診察中、よくぞ聞いてくれたとばかりに話しだすのです」
EDを自覚しない男たち
80代で性生活のある女性は、2種類に分けられるという。一つは、夫の求めに従う消極的なタイプ。もう一つは、夫と死別した女性が、60代くらいの男性を恋人にもつ積極的なタイプで、閉経後も定期的に性生活がある人たちだ。
一方、男性はどうか。ED専門の「浜松町第一クリニック」の竹越昭彦院長がこんな話をする。
「診察室に強気の姿勢で入ってきて、『俺はEDじゃないけど、中折れするんだ』と主張する中高年がいます。行為中に萎えてしまうのはEDなのですが、理解しない方が多いんです」
竹越氏によれば、40代の3割はEDだという。それでも自覚しない患者に、彼はこう説くという。
「“力”という文字がつく記憶力や視力、体力というものは、40代になると誰もが衰えます。“勃起力”だってそうです」
性欲はあるのに、勃たないと苛立つ男たち。かたや、高齢になっても「女」であり続けることが可能な女性たち。この現象を解く鍵が、「性ホルモン」である。