厚生労働省が2017年に発表した統計によると、日本人の平均寿命は男性「81.09歳」、女性「89.26歳」と、過去最高を更新し続けている。「人生100年時代」と言われるなか、「QOL(生活の質)」の向上は、現代人にとってますます重要な課題となっている。中でも性生活は、人間らしい暮らしを送る上で避けて通れないテーマだろう。人は何歳までセックスできるのか――かつて「週刊文春」で話題を呼んだ本企画は、これからを生きる現代人にとっても示唆に富む。あらためてここに公開する。(前編より続く)

※「週刊文春」2012年7月19日号より転載。記事中の年齢や日付、肩書き等は掲載時のものです。

 女性は閉経によって女性ホルモンが減り、相対的に副腎から分泌されるテストステロンの量が優位になる。2005年、女医の集団による「横浜元町女性医療クリニック・LUNAグループ」をオープンした泌尿器科医の関口由紀医師は、こう言う。

「閉経後は個人差があります。副腎機能が元気な人は、テストステロンによって性的意欲が高い。

男女の性欲の強さが入れ替わる理由

 他方、女性ホルモンの低下により、萎縮性膣炎といって、膣が乾いて弱くなる女性もいる。性交痛が出るので意欲が下がり、パートナーの求めを拒否しセックスレスになってしまう」

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 50歳くらいを境に、女性が元気になり、男性が弱体化するのは、テストステロンの影響が大きいのだ。

 2012年6月17日、帝京大学で開かれた「お父さんの男性力を高めよう」という講演会で、壇上に立った久末伸一氏にLOH症候群(テストステロンの低下:「性腺機能低下症」)が多い理由を聞くと、「原因はわかりません」と言う。

「ストレスがかかると、急激にテストステロンが減少する事実から、震災やリストラなど社会的な背景があると思います。また、1年前に私は札幌医大から帝京大学に移りましたが、田舎より都会の方がLOH症候群は多いと思います」

硫黄温泉、腎兪、炒めたタマネギ

 ホルモン量を計るには、メンズヘルス外来などで採血から「フリーテストステロン値」が測定できる。日本人男性は8.5pg/mlが正常値の下限とされている。低い場合、テストステロン注射が最も有効だ。ただし注射後2週間はホルモン量が上昇するが、また元のレベルに落ちる。長期間、注射をするとアップダウンを繰り返すため、徐々に注射の量を減らす必要がある。または、1日に1、2回、顎の下に塗るゲル製剤がある。劇的にホルモン量がアップすることはないが、安定した数値になる。

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 そういった方法に頼らずとも、「自然にテストステロンを上げる方法がある」と、堀江教授は言う。

「副交感神経が活発になると、テストステロン値が上がります。それは心の底から笑った時、つまりリラクゼーションの時なんです。

 硫黄の温泉も副交感神経を高めるので、天然のバイアグラと言っていい。また、東洋医学で生命のエネルギーや生殖能力を司る“腎”という機能があります。腰にある腎兪(じんゆ)というツボに、鍼やお灸をあてることも効果的です」

 マウス実験では、炒めたタマネギを食すことでテストステロンが倍に増えることが最近わかったという。