2023年に医師から「このままだと来年の桜は見られないでしょうね」と、いきなりの余命宣告を受けた経済アナリストの森永卓郎さん。もともと長生きに興味がなかったが森永さんだが、なぜ「まだ死にたくない」と考えたのか? 新刊『身辺整理 死ぬまでにやること』(興陽館)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

末期がんになる前はふっくらとされていた森永さんだったが… ©getty

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いきなりの余命宣告

 何の自覚症状もなく、バリバリ働き、食欲も旺盛過ぎるほど旺盛だった私がステージⅣの末期がんだと告知を受けたのは2023年の11月7日のことだった。

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 今にして思えば前兆があった。

 畑仕事をしていた夏のある日、背中に激痛が走ったのだ。ただ翌日には治まったので、特に気にしていなかった。

 しかし水面下ではただならぬ異変が起きていた。

 私はかつて糖尿病を患っていて、GLP受容体作動薬という注射を日常的に打っていた。ごく短期間だが、インシュリン注射をしたこともあるほど深刻な状態だった。

 だが、還暦を目前に控えていた2016年にライザップで行った低糖質ダイエットの効果により、89キロあった体重がわずか2カ月で69.5キロまで落ち、それと同時に糖尿病は完治してしまった。

 ただ油断は禁物ということで、家の近所の糖尿病専門クリニックで数カ月に一度のペースで、定期検診を受け続けていた。

 2023年の10月の定期検診の際、主治医から「平時より5キロ近くも体重が減っている、人間ドックを受けたほうがいい」と促された。

 多忙だったから体重が落ちたのだろうと思ったが、主治医が言うならくらいの軽い気持ちで検査に臨むことにした。

 人間ドックを受けたのは11月1日。一週間後の7日に妻と検査結果を聞きに行くと、医師はパソコンでCT(体を輪切りにした画像を撮る検査)の映像を示しながら、「この辺りにモヤモヤが確認できます」と極めて静かなトーンで話し始めた。

 言われてみれば確かに肝臓に動脈血を供給する肝動脈の辺りにモヤモヤの影が映っている。その映像を指し示して医師はこう告げた。

「どこかにがんがあって、それが浸潤しているとしか考えられません」。さらに「このままだと来年の桜は見られないでしょうね」。