医師から余命4ヶ月の末期がんと診断された、経済アナリストの森永卓郎さん。治療当初に直面した、あるトラブルとは? 岸博幸氏との対談本『遺言 絶望の日本を生き抜くために』(宝島社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)

森永卓郎さんにいったい何が… ©時事通信社

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史上最悪のお正月

森永 昨年12月27日、ラジオ(ニッポン放送『あなたとハッピー!』)の生放送が終わった後、そのまま電車に乗って地元の病院に行き、すい臓がん向けの抗がん剤を打ったところ、その翌日から異変が始まったんです。2日後にはほぼ死にかけた。

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 どうなったんですか?

森永 まず、立ってられない。何も食べられないし、水さえ飲めない。思考能力はほぼゼロ。生まれて初めて「このままでは確実に死ぬな」と思いました。いまから思うと、抗がん剤が私の体に合わなかったんですね。

 自分の経験からも、これは相性がありますからね。

森永 そこで、家族とマネージャーが相談して、正月早々にあるクリニックが開発した気付け薬のような点滴を受けた。すると劇的に効果が表れまして、夕方にまったく歩けなかったのが、翌朝には歩けるし、食事もできる、思考力も元どおりと、一発で回復しました。

 へえ、そんなことがあるんですか。

森永 ただ、免疫力が普通の人の5分の1程度にまで落ちていて、「この状態でコロナにかかったら一発で死ぬぞ」と言われまして。そのまま2週間ほど入院していました。入院するときは歩けず車イス。退院するときは筋肉が落ちていてやっぱり車イス。悲惨な正月でしたねえ。

 その後、どのような治療をされたのですか?

森永 入院中に別のクリニックで遺伝子パネル検査を受けました。これは、血液をアメリカに送り、80種類の遺伝子について変異の有無を調べるというものです。どこにがんがあるのかを調べる検査ですね。ところが検査の結果、すい臓がんであれば95%の確率で見つかるという「KRAS」と呼ばれる遺伝子変異がまったく出なかった。

 つまり、すい臓がんではなかったわけですか。