「え!? こんなことで?」

 これまで5000体以上の遺体を解剖してきたという法医学者の高木徹也さん。近年「まさか」と驚くような原因で亡くなる高齢者の遺体に出会う回数が増えてきているという。

 ここでは、高木さんの著書『こんなことで、死にたくなかった: 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』(三笠書房)より一部を抜粋。高齢者が「こたつに入る」ことで死に至る可能性を解説する。(全6回の3回目/続きを読む)

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法医学者・高木徹也さん

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こたつで死ぬ

 寒い季節、こたつに入ってぬくぬく過ごす至福のひととき……。

 ついウトウトと寝落ちしてしまうのも仕方ありませんよね。家族から「風邪をひくよ」「やけどするよ」と声をかけられても、なかなか起きられないものです。

 それもそのはず。実はこのとき、下半身が温められていることで身体の血管は拡張し、相対的に脳血流が低下するため、「気絶」に近い状態になっているのです。

 そして、「そのまま寝ていると風邪をひく」というのも決して大げさな話ではありませんし、なんと、こたつに入ったまま亡くなってしまうこともあります。

※写真はイメージ ©piamun/イメージマート

 よくある事例は、寒い冬の夜、外食や飲酒をして帰宅し、部屋の暖房をつけずにこたつに入る……。そして翌朝、寝ているような体勢で死亡しているのを発見されるケースです。突然死と同じ扱いなので、現場に到着した救急隊から警察に連絡が入ります。そこで、やけどのように下半身の皮膚がタダレていることが発見され、「火傷死」が疑われて解剖になる機会も少なくありません。

 このようなケースの大半は、やけどは長時間こたつに入っていたためにできたものであって、死因は「脳梗塞」や「心筋梗塞」と判断されます。