「え!? こんなことで?」

 これまで5000体以上の遺体を解剖してきたという法医学者の高木徹也さん。近年「まさか」と驚くような原因で亡くなる高齢者の遺体に出会う回数が増えてきているという。

 ここでは、高木さんの著書『こんなことで、死にたくなかった: 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』(三笠書房)より一部を抜粋。高齢者が「性行為をする」ことで死に至る可能性を解説する。(全6回の2回目/続きを読む)

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法医学者・高木徹也さん

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性行為で死ぬ

「腹上死」という言葉をご存じでしょうか。

 これは性交渉中に死亡することの俗語ですが、法医学の分野を世に広めた功労者でもある、大先輩の上野正彦先生も研究していたテーマです。

 腹上死は突然死全体の0.6~1.7%を占めるという報告もあるようですが、日本国内の割合は正確には把握されていません。一部の論文では、腹上死の75%が不倫関係にあったと報告されていますが、これまでの私の解剖経験では、高齢者による非常に若いお相手との性交渉時、そして、近年認可された勃起不全治療薬「バイアグラ」の服用時が目立つ印象があります。

※写真はイメージ ©show999/イメージマート

 腹上死が「腹の上で死ぬ」ことを指すため、男性が「正常位」での性交渉時に死ぬことだと思っている方も多いようですが、正常位以外でも、また、男性でなく女性が死亡する場合も「腹上死」と表現します。

 さらに、今回は高齢者に焦点を当てて解説しますが、若年者でも発生する可能性があることを理解していただきたいと思います。

 性交渉は、男性の場合、肉体的に陰茎の勃起と射精という一連の流れで行なわれます。