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「お父さんの魅力が減った」

 このホルモンについて、2012年6月17日、帝京大学で「お父さんの男性力を高めよう」という講演会が開かれた。壇上に立った、帝京大学医学部附属病院泌尿器科の堀江重郎教授と久末伸一講師の2人は、新宿の「城西クリニック」が5月から始めたメンズヘルス外来でのアンケート調査を発表した。それは、「お父さんの魅力が減った」と思う娘たちが気にする、父親の変化である。

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 最も多かったのが、「イライラ、短気」。次に「薄毛」、そして「神経質」「太った」と続く。

 実は、こうした変化に共通するのが、男性ホルモンの一種「テストステロン」の減少だ。2人の医師がテストステロンの減少に注目したのは理由がある。

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「鬱病は女性の方が男性より4倍多い。でも、40代から50代の男性の自殺者は、女性の4倍にもなる。この年代に注目して研究すると、テストステロンの低下と関係があることがわかったのです」(久末氏)

テストステロンの低下=「男の更年期障害」

 最近も、震災後から鬱状態になった工場経営者が、帝京大学のメンズヘルス外来を訪ねてきたという。男性は50代後半。両脇を家族に抱えられた彼は、震災によって東北から資材を調達できなくなり、経営が立ちゆかなくなってしまった。そして、ストレスから鬱状態になったのだ。

 男性のテストステロン量を調べると、驚くほど低い。すぐに診断してホルモン注射を行うと、2度目には一人で歩いてやってきた。表情も変わり、今では工場も立て直したという。

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 テストステロンの低下は「性腺機能低下症」と言われ、2007年より「LOH症候群」という名前で正式に病気として認定されている。いわゆる、男の更年期障害である。

 久末氏に話を聞こう。

「女性の更年期は、閉経がきっかけとなり、女性ホルモンがストップするので、変化がハッキリとわかります。しかし男性の場合は、だんだんと調子が悪くなるため、気づきにくい。

 男性更年期は、性、体、心にそれぞれ影響が出ます。この3つが繋がっているため、セットで治療する必要があるのです」

 テストステロンはその95%が精巣でつくられ、残りを副腎が分泌する。第二次性徴期で急に活発となり、中学生から高校生になる頃に筋肉がつき始めて男らしくなる。攻撃的になり、異性への関心が強くなる。だが、ピークは20歳。そこからは下り坂となる一方だ。

 では、男性更年期にはどういう初期症状が出るのか、まずは「性」から見ていこう。