文春オンライン

《性器の硬さにこだわる医学的根拠とは?》みうらじゅんと今井伸医師が語り合う「老いるショックと射精道」

総力特集 不老長寿への挑戦

note

硬くなくてもいい。回数が減ってもいい。中高年の性は諸行無常だ――。著書『射精道』が話題の医師・今井伸氏と、みうらじゅん氏による対談「老いるショックと射精道」(「文藝春秋」2023年3月号)の一部を転載します。

◆◆◆

 思春期から中高年までに向けて、射精についての知識と心構えを解説した話題の本『射精道』(光文社新書)。その著者で泌尿器科が専門の今井伸医師と、「週刊文春」で「人生エロエロ」を連載中のみうらじゅん氏が、性の目覚めから、中高年の性生活までを語りつくす。

 今井 これ、お土産です。浜松の「夜のお菓子」。ブランデーを使った最高級のVSOPです(笑)。

ADVERTISEMENT

 みうら 出た! うなぎパイ(笑)。ありがとうございます。今井さんは浜松の病院で、性機能障害や男性更年期の診察をなさっておられるんですよね。

 今井 はい。今回は愛読しているみうらさんの本も持ってきました。

 みうら ご著書のあとがきに「人生の2分の1は性的なことを考えて生きてきました」と書かれていたので、当然、「人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた」で始まる僕の連載は読んでくださっていると思っていたんですが(笑)。

みうらじゅん氏 ©文藝春秋

 今井 昔からガチのファンなんです。

 みうら どうも。ところで今井さんの『射精道』を拝読し、意外な共通点があることが分かったんですよ。ほら、思春期のころ、オナニーのあと、ティッシュを五右衛門風呂の火で燃やしていたと書いておられたとこ。実はうちの実家も昔、五右衛門風呂だったんです。

 今井 そうなんですか!

 みうら 僕の場合はエロ本が親に見つかると、五右衛門風呂の火にくべさせられたんですけどね。その後、「エロくべ風呂」に浸るのがとても辛くて(笑)。

 今井 私も寝床の下に隠した『みんなあげちゃう』という、ちょっとエッチな漫画を見つけられたことがありますよ。

 みうら 初期は大体、そこに隠しますよね。でもすぐに捜査の手が入る。

 今井 そうでした(笑)。ありがたいことに、両親は問いつめたりしなかったので、その後は「週刊プレイボーイ」から、「アップル通信」「デラべっぴん」など、興味のおもむくまま集めて、部屋にある段ボールの中に隠してました。

性に目覚めたころ

 みうら エロ&ピースな家庭で羨ましい(笑)。僕はよくオナニーが親に見つかりましてね。「そんなとこイジってばかりいると、バイ菌が入って、しまいにはウミが出るぞ」と、脅されたもんです。

 今井 もう射精していました?

今井伸医師 ©文藝春秋

 みうら いや、小4でしたからまだ出ないです。射精したのは6年生の終わりごろですね。ある日、突然、ピューッと。「親の言うこと聞かなかったからバチがあたった」と焦りましたね。

 今井 バチだと(笑)。

 みうら ウチの実家は京都なのですが、ある年、大文字焼きの日に部屋で隠れてオナニーしていたら、また親父に見つかったんですよ。すると親父は星一徹みたいな顔で、窓の外の大文字焼きを指して、「男はな、大の字になって寝るんや」。

 今井 ははは(笑)。

 みうら 今井さんの初射精はいつでしたか? お父さんの机の引き出しからエロ本を発見、それで性に目覚めたと本にありましたが。

 今井 はい。写真やエロ漫画とか色々なものが載っていて、見るとモヤモヤするけど、最初はどうしていいか分からなかったですね。どうやら手を使うらしいと聞きこみ、半年以上、試行錯誤していたら、あるときピュッと、少し出ました。

 こんなに語れるのには理由があって、診察していると、射精がうまくできない射精障害の男性があまりに多いからなのです。そうした方には正しいオナニーを指導しますが、そういえば自分はどうだったのかなと思い返していくと、色々な記憶が甦りました。

 みうら イクのにも、人それぞれのコツがありますからね。

 今井 そうなんですよ。思春期なら性欲が旺盛で時間もあるから、コツをつかむまで一日に何度も練習できますが、大人になると、それも難しい。仕事で疲れているし、時間もない。性欲も思春期ほどではないので。

 だから正しい射精のコツを知らないまま結婚して、腟内射精障害のため子どもができないケースも、少なくないのです。

 みうら なるほど。僕の場合、さらなるエロを求める余り、中学生の頃からSM系にハマりましてね。

 SM系のエロ本が見つかると、ノーマルエロより険悪なムードになりますからね。その“後ろメタファー”がずっと付きまとう。だから今井さんの提唱されてる射精道としては間違っていたと思いますね。

 今井 そういう面はあって、このところ性欲低下やED(勃起障害/勃起不全)を訴える若者が増えていますが、原因の一つと考えられているのが、過激なエロ動画の視聴なんですよ。

 エロネタといえば、みうらさんはお気に入りのエロ写真を集めた「エロスクラップブック」を作られているんですよね。

 みうら はい、最近は老いるショックの逆影響からか、やたらペースが速まりましてね、月に4冊くらい出来てしまう始末で(笑)。

 今井 選んでいるネタは変わってきていますか?

 みうら 当然ながら熟女モノを多く貼るようになってますが(笑)。

 今井 エロスクラップは妄想の入る余地があるからいいですね。妄想力が維持されることは大事で、それが低下すると、強い刺激でなければ反応しなくなって、実際のセックスが難しくなることがあるのです。