フル勃起からの解放
みうら いや、もうエロを切って貼ることで精一杯ですよ(笑)。これは仕方ないことなんですよね。
今井 はい。加齢にともない、男性ホルモン(テストステロン)が減少していくと、性欲自体が弱くなり、勃起力も衰えていきます。日本人は70代になると、71%以上が中度から完全なEDだという調査結果が出ています。
それ以外のリスク要因は血管系と神経系ですね。血圧が高くて動脈硬化の傾向があると、いちばん末梢の動脈のある陰茎まで血液が流れなくなって勃起が弱まります。
糖尿病などで神経障害がある場合も、神経の伝達がうまくいかず、弱くなります。あと肥満もリスク要因です。
みうら でも僕、逆に歳をとって良かったなと思ってるんですよ。ようやく煩悩から少し解放されたような気がしてね。
フル勃起時代って、やっぱ辛かったじゃないですか。アレが主役で自分は脇役みたいな。いや、あいつの腰巾着でしょ(笑)。
枯れ始めたことで、いまは僕のほうが完全に優位なので、あいつが勝手に勃起しそうになると、「今さら何してんだ、おまえ」と言えるようになりましたから。
今井 それはすごい(笑)。
みうら でも、高齢者向けの雑誌では「死ぬまで勃起」と謳いますでしょ?
今井 硬い勃起にこだわる人は多いですね。硬いほうが「生きてる」と感じるみたいで……。勃起力が加齢とともに弱まるのは自然なことなのですが、男性としての自信と関係していることもあるのか、フル勃起できないと不安や焦りを感じる方も多いのです。
みうら 結局、つまらない男のプライドからくる不安じゃないですかね?
今井 それもあるかもしれませんが、陰茎が硬いほうが、挿入したときに女性器の痛みが少ないという面もあります。腟内の診察に使うクスコという医療器具が金属製なのも、その理由からです。
みうら ペリカンの口みたいなやつですね。
今井 そうそう。硬いのでスムーズに挿入できます。男性器が柔らかいと腟との摩擦が増えるので、女性の性交痛を招くことがあります。
それに中高年女性ですと腟分泌液の潤いが不足しがちですから、勃起力の衰えた中高年男性とのセックスでは、痛みが生じやすくなるのです。
みうら 両方に原因がある、と。
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今井伸氏、みうらじゅん氏による対談「老いるショックと射精」の全文は、月刊「文藝春秋」2023年3月号と、「文藝春秋 電子版」に掲載されています。
老いるショックと射精道
【文藝春秋 目次】芥川賞発表 受賞作二作全文掲載 井戸川射子「この世の喜びよ」 佐藤厚志「荒地の家族」/老化は治療できるか/防衛費大論争 萩生田光一
2023年3月号
2023年2月10日 発売
特別価格1300円(税込)