1ページ目から読む
2/4ページ目

「妊娠してしまうかも」という不安からの解放

 しかし、女性の体で分泌されているホルモンは、女性ホルモンだけではありません。実は女性の体でも、卵巣や副腎で男性ホルモンの一種、テストステロンが分泌されているのです。その量は、男性の10分の1程度といわれています。

 そして、更年期においてエストロゲンは激減しますが、テストステロンは必ずしも下がりません。このことにより、女性の体の中では相対的にエストロゲンよりもテストステロンが高くなる、という現象が起こります。そのため中高年の女性のなかには、今まで以上に性衝動が強くなり、性的にアクティブになる人がいると考えられています。

 また、卵巣機能が停止し、閉経を迎えることで、女性は妊娠する可能性がなくなります。

ADVERTISEMENT

 もちろん望んでいる人にとって妊娠は大変喜ばしいことですが、女性にとって非常に大きな身体的、精神的な負担を強いる側面もあります。ですから、閉経を迎えることで、「ひょっとして今、セックスをしたら妊娠してしまうかもしれない」という不安から解放され、セックスそのものを楽しめるようになる女性も少なくありません。子どもが自立し、母としての役割が一段落するのも、ちょうど閉経を迎えるこの時期です。

©AFLO

“推し”によるトキメキのよみがえり

 女性が50代、60代でセックスを楽しみ、性的成熟を迎えることの背景には、こうした身体的・社会的な役割の変化が存在しているのです。

 とはいえ性欲は、ホルモンの値だけで測れるものではありません。特に女性の場合は、環境によっても性欲は大きく左右されます。最近では、中高年の女性が韓流スターや若いアイドル、スポーツ選手にハマることはもはや珍しくありません。“推し活”や“エアー恋愛”といった言葉も流行っています。

 仮に、「最近は、性欲もすっかりなくなってしまって……」と嘆いている更年期世代の女性がいたとします。たしかにエストロゲンの量は激減しているかもしれませんが、目の前に“推し”のイケメン俳優が現れたらどうでしょう。遠い昔に忘れていた胸のトキメキがよみがえり、胸の内ではひそかにセクシュアルな想像をするかもしれません。