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20代で総長のカバン持ち、シャブの売上は月に200万円超え…東大を目指していた予備校生が“ヤクザ“に入門した理由「俺もついに売人か…」――2023年読まれた記事

諸橋仁智氏インタビュー#2

2024/01/04

genre : ライフ, 社会

note

アニキの兄弟分の事務所で闇金修行

諸橋 まず、渡される量が多かった。アニキからボーンと預けられて、「これで30万円持ってこい」と言われたとしますね。そうしたら、僕がいくら売り上げようとも30万円をアニキに渡せばいいんです。

 ただ、最初からパケで小分けした状態で渡されないので、自分で量ってパケに入れなきゃいけなくて。しょうがないから、ホームセンターでスケールを買いましたよ。スケールを片手に帰りながら「俺もついに売人か……」としみじみ思ったのを覚えてます。そこが売人としての出発点でした。

 で、大学をやめたらアニキに「神田にある闇金で修行してこい」って言われて闇金になったけど、ガッチリ売人になっちゃっていたんでね。昼は闇金をやってたけど、完全に売人として動いてましたね。

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――いずれ“アニキ”が渋谷で闇金を始めるからイロハを覚えておけと。

 

諸橋 神田の闇金の社長は、アニキの兄弟分みたいな人で。その社長のパワハラが凄まじくて、とにかく理不尽でしつこいんですよ。社長は巨人ファンで、テレビで野球を見ていて巨人が点を入れられるたびに僕を殴るんです。あと、上原(浩治)が打たれたりするじゃないですか。そうすると、僕に包丁を渡して「これで、あいつを刺してこい」って。「いや、無理です、無理です」「うるせえ、行ってこい!」ってのを延々とやるんですよ。

 取り立てのイロハも叩き込まれて、ガムテープで受話器を右手にくっつけられて取り立ての電話を一日中かけさせられたりしましたね。

 アニキに迷惑を掛けたくないし、「渋谷に闇金の事務所を出すまでだから」と言われてたので耐えました。神田には、1年ちょっといたのかな。でも、良くも悪くも神田の社長に叩き込まれた“しつこさ”が司法試験に活きましたね。なにがなんでも諦めないっていう。

社長からのパワハラを受けながら、エグい取り立てを経験

――社長からのパワハラを受ける一方で、エグい取り立てもしていたそうですが。

諸橋 そうですね。期限の日の15時までに入金がないと電話をかけるんですけど、お客本人には電話しない。お客の家族やその勤め先に電話するんです。「おたくで働いてる◯◯さんのお母さんが、お金を返してくれなくて困ってるんですよ」みたいな。

――ドラマに出てくる、家のドアをドンドン叩いたり、張り紙をしたりってのは。

諸橋 やってました。いまだったら、貸金業法違反や恐喝で逮捕されますね。

――最初のうちは、取り立てることに抵抗があるものですか。

諸橋 そうですね。でも、なんとも思わなくなるんです。15時から取り立ての電話をして、店が開いている17時までに返しに来なかったら、「よし、家に行くか」って数人でワーッと押しかけるんです。

 ひとりでは取り立てに行かないんですよ。この数人で行くっていうのが、集団心理みたいなもので良心が消し飛んじゃうんです。振り返ると、申し訳ない気持ちでいっぱいです。