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ジャニー喜多川氏の性加害問題で、BBC報道後にテレビは何を伝えたか〈局の施設内でも行為を繰り返した証言が…〉

2023/12/30
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 一連の各局による自己検証では、社員や元社員らに大がかりに聞き取りを行っている。報道、制作、編成などの社員や幹部、元社員など。旧ジャニーズ事務所側が費用を持った形でのハワイへのメディア関係者のツアー参加もあったTBSではジャニー氏による追突事故をニュースで放送しようと準備していたら、編成局員が報道に乗り込んできてニュースが差し止められたケースがあった。他にも「絶対に逆らうな」と上司から指示されるなどの証言もあった。絶大な権力を誇った旧ジャニーズ事務所に対する、組織的な忖度や特別な存在としての気遣いなどが透けてみえる。

メディアとしての「報道力」の逆転

 2023年の旧ジャニーズ事務所での性加害問題の報道をどう考えるべきなのか。

「週刊文春」による一連のキャンペーン記事を名誉毀損だとしてジャニーズ事務所が文春側を訴えた裁判では、2003年に東京高裁で記事の“性加害”の重要部分が真実と認定され、2004年には最高裁でも踏襲された。

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 それなのにテレビはどこもニュースで放送しなかった。

 TBSの調査報告では「編成局など他部署の介入があったのか調べたがその事実は確認されなかった」とし、「当時、新聞・テレビの記者には、『週刊誌報道の後追いはすべきではない』という意識が強かったのも事実」だろうとしている。つまり週刊誌が追う芸能ゴシップに過ぎず、ニュースバリューを感じなかったという。どの社でも同じような結果になっている。

看板が撤去された旧ジャニーズ事務所の本社ビル ©時事通信社

 ただ、その頃と現在とではメディア環境が大きく変わった。今回のジャニーズ性加害問題では3月のBBCのドキュメンタリーの放送から「週刊文春」が先行し、元タレントで性被害を訴えている人たちのインタビューを次々に「文春オンライン」で配信して主導した。ここに見られるのは、メディアとしての「報道力」の逆転である。

 男性も性加害の被害者になりうること。心の傷の深刻さ。巨大な権力を誇る芸能事務所も「人権」を大事にしないと市場から淘汰されかねないこと。そんな厳しい時代を迎えていることを多くの国民に示したと言ってもいい。

 その意味では、2023年の“ジャニーズ性加害問題”は週刊誌メディアとテレビなどの既存メディアが結果的にタッグを組んだ報道キャンペーンのようなものになったといえる。

 メディア環境が激変するなか、週刊誌メディアと既存メディアとが切磋琢磨して緊張感ある報道の合戦が実現した年だったと総括できる。2024年も信頼回復をめざす旧ジャニーズ事務所との間でメディアは忖度のない相互監視を実現してほしい。

ジャニー喜多川氏の性加害問題で、BBC報道後にテレビは何を伝えたか〈局の施設内でも行為を繰り返した証言が…〉

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