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100万回再生ドラマの題字を手がけていたのは…?「書道の師範を取りました」俳優・おしの沙羅(28)がたどった“異色の経歴”《写真多数》

おしの沙羅さんインタビュー

source : 週刊文春Webオリジナル

genre : エンタメ, 芸能, アート, テレビ・ラジオ

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グラビアへの未練は…

――グラビアアイドルへの未練はなかったのですか?

おしの ありがたいことにグラビアアイドルのお仕事は全てやり切った感覚でした。「これ以上できることはない」ってくらい色んなお仕事をさせてもらいました。周囲からは「グラビアアイドルをやりながら女優を目指せば?」とよく言われましたが、グラビアアイドル忍野さらの延長線上に、自分のなりたい女優像というものは見えなかったんです。

 忍野さらとして進化するのではなく、ゼロから生まれ変わる必要があると思いました。なので未練を持ったことは今のところ一度もありません。お世話になった全てに感謝をして、このタイミングでちゃんと辞めたいと思いました。

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 それまでは若さもあり、刹那的なものに魅力を感じたり、今しかできないようなことにたくさん挑戦してきましたが、25歳になった時、これからは10年、20年、30年と時間をかけて豊かにしていけることを磨いていくことが自分の理想であり、生きていくことへの楽しみにもなっていったんです。

昨年9月、「忍野さら」から「おしの沙羅」に改名したことを発表した ©松本輝一/文藝春秋

――「こういう役者になりたい」と、目標にする方がいたのでしょうか?

おしの 私、『スローなブギにしてくれ』という映画の浅野温子さんがすごく好きなんです。目の奥にとても強い意思を感じたというか、存在感にすごく惹かれるなって思いました。「この人は次に何をするんだろう」と目が離せないような魅力を感じます。

 あとは、香港映画やウォン・カーウァイ監督の作品が好きなのですが、俳優のトニー・レオンさんもムードが漂っていてずっと憧れなんです。トニー・レオンさんは「この人の周りで次なにが起こってしまうんだろう」という雰囲気があって、周りを取り巻いてくような不思議な魅力を感じるんです。

「今の自分には何もない」

――グラビアアイドルから女優への転身で、生活も急に変化したと思いますが。

おしの それまではグラビアアイドルの仕事が生活の軸でしたけれど、やっぱり辞めてすぐに俳優としてお話をいただけるわけではないので、「無の時間」を過ごしました(笑)。

 仕事だけではなく「自分の人生」という括りで自己と対話する日々でした。そして今の自分に何もないということを実感しましたよ。何もない自分を心の底から実感できた時、なぜか絶望ではなく、体が自然と前に進もうと歩み出したんです。

 そこからは新しい自分をつくっていくためにあらゆることをしてみました。日常生活もすべて変えることから始めて、生活習慣を見直したり、引っ越しをしたり、自分の部屋のもの全て買い替えたり、テレビやベッドも捨てたくらいです(笑)。