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「クマに引きずり下ろされ…」幼稚園児も登る低山の“冬眠穴”にヒグマが潜んでいた! ベテラン調査員が陥った“ワナ”

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2024/01/30
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「おお、俺、クマやるんだ、と思いましたね」

 2018年に北海道新聞へ入社した尹順平が最初の赴任地、網走支局での3年あまりの勤務を経て、札幌本社・報道センターの社会遊軍に配属となったのは2022年3月のことである。

「社会遊軍」には15名ほどの記者が在籍しているが、人事異動を経て新年度を迎えると、新たに各記者の名前の横に担当が記された〈割り振り表〉が配布される。通常は、〈原発〉や〈北方領土〉あるいは〈防衛〉や〈若者〉といった担当が書かれるわけだが、尹の名前の横には〈クマ〉の文字があった。つまりこれが「クマ担」への任命というわけだ。(全4回の2回目/#3に続く)

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北海道新聞社本社。報道センターは6階にある ©時事通信社

◆ ◆ ◆

「クマ担」リーダーの“布教活動”

 大阪出身の尹だが、入社前に北海道をレンタカーで回り、知床半島を訪れた際、車窓越しに野生のヒグマを初めて見たという。 

「本当にこんな身近にクマがいるんだ、と北海道の自然の豊かさに感動しました」

 最初に配属された網走支局の管轄には、クマが多数出没する斜里町・ウトロが含まれており、年間の目撃件数でいえば1000件は下らない。そこで尹は日本におけるヒグマ研究の先駆けともいえる「知床財団」(斜里町・羅臼町)の取り組みを記事にしたりしている。

 そういう地方支局の記者たちのクマ記事に札幌で目を光らせていたのが、初代「クマ担」記者であり、リーダー役をつとめた内山岳志だ。当然のことながら、「クマ担」といっても札幌本社の2、3名だけで全道で起きるクマ事件をカバーできるわけではない。

初代「クマ担」の内山岳志さん

「むしろ日々、各地で起きる事件に対しては全道の支局の記者が対応することが多いわけです。僕は各地の事件をウォッチしながら、記事にできそうなものがあったら『これ、書けるんじゃない? 社会面行けるよ!』と現地の若い記者に声をかけるんです。クマ問題は北海道においては、今後間違いなく大きなテーマになってきますし、クマ取材を好きになってもらいたいんです」(内山)

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