OSO18の神秘性を高めているのは、その甚大な被害に比して実際の目撃情報はたった1件と極端に少なく、足跡などの痕跡さえほとんど残さない“神出鬼没”ぶりにある。(全4回の2回目/#3に続く)
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残雪期の足跡を追え!
そこで藤本靖をリーダーとする「OSO18特別対策班」が現地で最初に取り組んだことは、OSOの確かな痕跡をみつけて、その実像を正確にプロファイリングすることにあった。最初のチャンスは2022年3月の雪融け時期、冬眠明けのOSOが動き出し、かつその足跡が残雪上に残されるタイミングにあった。
もっとも、これとて口でいうほど簡単な話ではない。藤本はこう語る。
「ほどよく(気温が)あったかくて雪が融け始めたところをクマが歩いてくれれば足跡が残るけど、凍ってる上を歩かれたら足跡なんてなんもない。場所だって道路の上ならともかく、ヤブの中に入られたら、やっぱり基本的に足跡は追えないからね」
“現役最強のヒグマハンター”赤石正男も「みんな“残雪期なら足跡とれる(追える)でしょ”って簡単に言うんだけど、いろんな条件が揃って本当に足跡をとれるのは、せいぜい1週間しかない」と語る。
しかも特定の1頭の足跡を追うのだから、それは「砂漠の中で落とした1本の針を拾うようなもの」と藤本が表現するのも頷ける困難なミッションであることは間違いない。
結局、この残雪期の間、OSOの足跡を見つけることはできなかった。
予測されていたOSOの襲撃ルート
冬眠明け直後のOSOの足跡をとることが出来なかった以上、次なる捕獲のチャンスはOSOが牛を襲ったとき、ということになる。藤本は2019、2020、2021年という過去3年のOSOによる被害現場をプロットしていくことで、その冬眠場所を「厚岸町西部の森林地帯ではないか」と予測、これから迎える2022年の夏にOSOの被害が出る可能性があるルートを2つに絞った。予測冬眠場所から東へと向かう「厚岸ルート」と北へと向かう「アレキナイ」ルートだ。
そして2022年7月1日、この年最初のOSOによる被害が出る。東アレキナイ牧野で3頭の牛が襲われたのである。藤本の読み通り、「アレキナイ~チャンベツ」ルート上だった。早速藤本らはルートに沿って特製の箱罠を設置したが、OSOがかかる気配はない。
その裏をかくように7月11日、2件目の被害が出る。中チャンベツの牧場で1頭の牛が殺されたのである。