迎えた2023年。春先の残雪期という最初のチャンスも、冬眠明けのOSOの足跡はどこにも見つからなかった。今年は例年にないペースで雪が融け、3月15日には早々に残雪ゼロになってしまったことも不運ではあった。それでも「OSO18特別対策班」リーダーの藤本靖らに慌てる様子はない。過去の被害実績からアレキナイとオソツベツ近辺に絞って、多数の定点カメラを設置し、OSOの襲来に備えている。その映像を分析した藤本は、ヒグマたちの「ある異変」を指摘する。(全4回の4回目/#3から続く)

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「デカいクマがゴロゴロ来てる」

「今年、カメラに映ったクマがみんなデカいんだわ。中チャンベツからアレキナイにかけて、300キロから400キロクラスのデカいクマがゴロゴロ来てる。それだけ栄養豊富ということはシカを食ってる期間が長いんじゃないか。どんどんデカくなっている」

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ヒグマ(北海道斜里町)©時事通信社

 ハンターの赤石正男もこう語る。

「もうどうしたもんだか、すごいもん。シカの越冬地が浜中とか風蓮湖周辺なんだけど、雪が融けてシカがこっちに移動してくるのにあわせて、クマもついてきているんだな」

 実はクマにとって最大の敵はクマである。人里付近に親子グマが現れるのは、山にいる身体の大きいオスグマを避けてくるからだ。クマは基本的に自分より身体の大きいクマがいる場所は避けようとする。

「いくらOSOといえど、体重400キロクラスのクマがゴロゴロといるエリアは避ける可能性が高い。だとするとアレキナイには出ないかもしれない。逆にオソベツ周辺は今のところ小さいクマしかいない。いずれにしろ最後はくくり罠で勝負することになるね」(藤本)