JR環状線もしくは地下鉄長堀鶴見緑地線の玉造駅から長堀通りを西に10分ほど直進すると、空堀町交差点の五叉路が見えてくる。位置的には北方向が大阪城で、以前ご紹介した「ヨイヨイ亭」にもほど近い。だが周囲に店舗は少なく、一本裏道に入れば住宅地。にもかかわらず印刷関係の会社がちらほらと見えるのが不思議だが、ともあれそんな環境の五叉路の一角で営業を続けているのが「楽園」だ。
「これはきっといい店だ」と確信する店構え
すっかり色が褪せた日よけの左側には、うっすらと黄色く「中華料理」の文字。白く抜かれた右側の店名にいたってはほとんど識別できないが、その真下のガラス扉には「楽園」の文字が金色に光る。八角形をしたショーウィンドウのつくりも含め、なかなか本格志向の店構えである。
「これはきっといい店だ」
確信に近い思いを抱きながらドアを開けると、「いらっしゃいませ」と奥様らしき女性の声が聞こえる。店内の左側には、建物の変則的な形に合わせて4人がけのテーブル席が4卓。入ってすぐ左側のテーブル脇に置かれた台の上にはスポーツ新聞。その下にはきれいに積まれた少年マガジンの山。
右側は、機能的に整えられた厨房を囲むようにL字型のカウンターだ。その天板とテーブル席は赤色で統一され、2面あるすりガラスの窓から午後の光が注ぎ込む。壁や天井は煤けているが、それも味。とてもいい雰囲気である。
厨房内の店主は堅物そうに見えるのでやや緊張するが、ともあれまずはビールと餃子を。と思ったが、メニューをきちんと見てみれば気になる品ばかりだ。大阪の友人と「あれも食いたい、これも食いたい」と盛り上がり、ブタ天とニラ玉子炒め、とりの天ぷら、そして炒飯も注文してしまったのだった。ひとりでは食べきれないに決まっているが、よく食べる友を持つと、こういうときに心強い。