たしかに、とんこつ特有の臭みは皆無だ。
「(店の前)通ったら、とんこつのにおいがグーッとするラーメン屋あるもんな。そういう店はな、炊きよるねん。炊きっぱなしやからよけい濁るっていう話。で、とんこつの骨でも割ったりしてるやろ。よけいエキスが出て濃厚でうまいんかどうか知らんけど、そういうことはせえへんもんな。澄んだスープがええんや。濁らしたらあかんねん。ある程度沸騰させて、ゆるゆると炊くんやな」
濃い味も悪くはないが、そればかりだとさすがに飽きる。もちろん好みの問題だが、結局のところはシンプルなラーメンがいちばんいい気がする。
「そうやな。年いった人はいうわ、あっさりしたのがええって。とんこつとかああいうのは食われへんって。ほな、おまえ、こんなのシンプルやろ」
だが、明らかに手間がかかっているのに、これを550円で出しているというのは驚きだ。はたして、採算はとれているのだろうか? お節介な話だが、やはり気になってしまう。
「なってない、店の儲けに。中華は単価が安い。いまもう中華するやつはおらんのちゃう? えらい重労働やし。そやから、もうやめようかな思ってたんやけど。やめて、ボケてきたりしたらかなわんな思うて」
「せやから、もう商売しかないなあ、わしの一生は」
店名の由来は、かつて世話になった中国人が神戸で営んでいた同名店。「いい名前やなと思って」決めたその名前を掲げ、日曜日を除く週6日、昼休みなしの通し営業をしている。大変そうではあるが、そんな日常がよい刺激になっていることは間違いなさそうだ。
息子さんと娘さんは“普通のサラリーマン”だそうで、店を継ぐことはないらしい。それもよく聞く話で、寂しい気がしなくもない。だが、キビキビとした動きや話のリズム感から察するに、まだまだ現役を続けていただけるのではないかと感じた。
「50年ほど前からやってるんだから。せやから、もう商売しかないなあ、わしの一生は」
(写真=印南敦史)
INFORMATION
楽園
大阪府大阪市天王寺区空堀町14-1
☎︎ 06-6768-9995
営業時間 11:00~21:00
定休日 日曜
餃子 300円
ブタ天 850円
ニラ玉子炒め 700円
とりの天ぷら 800円
炒飯 600円
ラーメン 550円
