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「人とたくさんかかわると、整理することも増えてしまう」一児の母・前田敦子が語る “子どもが眠ったあとに考えること”

三島由紀子監督x前田敦子対談

2024/02/09
note

子どもからは「大きな体温を感じる」

前田 私は大きな体温を感じる子どもがいるので、それで十分な感じがします。私は性格的に、本来あまり人といられるタイプじゃないと思うので、今、私に子どもがいるのって奇跡だよなって思います。

三島 なるほど、前田さんにとって、お子さんの存在はかなり大きいようですね。

前田 すごく大きいです。子どもを見ていると、客観的に自分を見ているような気になることがあります。たとえば、先ほども思ったんですが、うちの子も何歳なんだよとツッコみたくなることがあって、まるで50代のおじさんのような言葉遣いをするんです。

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三島 お母さんと同じで、お子さんも戦前から生きているのかもしれない(笑)。前田さんは社会に出て働き始めるのが早かったので、達観しているのでしょうか。見てきた世界は、同世代の人たちの倍どころではないでしょうから。

前田 ですから大方は忘れていますが(笑)、人生にはいろいろなことがあったよ、それでも人生は続いていくよと、けっこうわかっていますよ。

三島 どんな傷があっても人生は続きますよね。この映画を観終わった後に、ご飯をガツガツ食べてくれたらいい、誰かに会いに行ってくれてもいい、「とにかく生きてくれ」と願いながら、みんなで作ってました。

 

 それで、前田さんのラストシーンがあり、映画のエンドロールは、汽笛から始まります。実は誰かが新しい世界へ船出したかもしれないという思いを込めました。

前田 船といえば私、二級小型船舶操縦士の免許を取得しているんです。

三島 え。ではれいこは大阪の街ではなく、船を操舵して大海原に繰り出すというラストがよかったかなあ(笑)。

Yukiko Mishima

みしまゆきこ/映画監督。大阪府生まれ。18歳からインディーズ映画を撮り始め、大学卒業後NHKに入局、2003年に独立。12年、オリジナル脚本で『しあわせのパン』を発表。『幼な子われらに生まれ』(17年)では第41回モントリオール世界映画祭で審査員特別大賞、第41回山路ふみ子映画賞、第42回報知映画賞では監督賞を受賞。その後『Red』を発表した。

Atsuko Maeda

まえだあつこ/女優。1991年千葉県生まれ。アイドルグループ「AKB48」の第1期生として2012年まで活動。卒業以降は、テレビドラマや映画、舞台に多数出演、女優として活動している。19年に映画『旅のおわり世界のはじまり』と『町田くんの世界』で第33回山路ふみ子女優賞を受賞。

photographs: Asami Enomoto
styling: Yusuke Arimoto(7kainoura/Maeda)
hair & make-up: Yurika Ichihashi(Mishima),  
Riho Takahashi(HappyStar/Maeda)

「人とたくさんかかわると、整理することも増えてしまう」一児の母・前田敦子が語る “子どもが眠ったあとに考えること”

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