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連載池上さんに聞いてみた。

池上 彰
2018/04/10

池上彰氏「マララさん里帰りの厳戒態勢に見る、パキスタンの特殊事情」

池上さんに聞いてみた。

Q マララさんの一時帰国、なぜこんなに厳戒態勢?

 2014年に女性教育の重要性を訴えてノーベル平和賞を受賞した、マララ・ユスフザイさんが母国パキスタンに一時帰国しました。国のヒロインなのに、安全上の理由から4日間の滞在中、詳細な日程は明らかにされていません。こういう話を聞くと疑問に思うのですが、まだまだ世界的に見て女性が教育を受けることは難しいのでしょうか?(10代・女性・高校生)

A パキスタンには「イスラム過激派の存在」という特殊事情があります。

 世界的に見て女性が教育を受けることが難しいとは一概に言えません。パキスタンには特殊事情があります。それは「パキスタン・タリバン運動」というイスラム過激派の存在です。略称はTTP。TPPと紛らわしいので間違えないでください。

 パキスタン軍は、隣国アフガニスタンでの影響力を強めようとアフガニスタンからの難民の子どもたちが通ったパキスタン領内のイスラム原理主義の神学校の学生たち(タリバン)に武器を持たせてアフガニスタンに送り込みました。

 しかし、タリバンの過激な思想がパキスタンに逆流。パキスタン国内で「パキスタン・タリバン運動」が力を持つようになりました。TTPは、「女性は家で大事に保護すべきもの」と考え、女性が教育を受けることに反対します。過去には多数の女学校を焼き討ちしてきたのです。

 ところがマララさんが「女性にも教育を受ける権利を」と主張したことから目の敵にして、下校中の彼女を銃撃したのです。

2018年3月31日、故郷に戻ったマララさん ©時事通信社

 マララさんはイギリスで治療を受けて回復し、イギリスの学校に通っています。これがTTPに限らず、パキスタンの保守的な人たちには面白くありません。自伝の『わたしはマララ』は海外でベストセラーになりましたが、パキスタン国内の書店では置いていないところも多いのです。

 そんな彼女が里帰り。安全を考えて厳戒態勢になったのです。

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