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「罵声を浴びるんじゃないか」韓国人100人の中に日本人1人だけ…日本人K-POPアイドルが明かす韓国オーディション番組の裏側

「罵声を浴びるんじゃないか」韓国人100人の中に日本人1人だけ…日本人K-POPアイドルが明かす韓国オーディション番組の裏側

『日本人が韓国に渡ってK-POPアイドルになった話。』より #1

2024/03/17
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「一番微妙で曖昧な評価である」レベル分けの結果は?

 レベル分けの結果、僕の評価はCだった。ちょうど中間レベルくらいのパフォーマンスだったのだろう。こうしてレベル分けされたクラスごとに、課題曲となる番組メインソングの練習が始まったのだが、2日後に中間評価があり、再度クラス分けをするという。FクラスやDクラスといった、下のクラスの練習生は自分の評価を挽回するために、AクラスやBクラスといった、上のクラスの練習生は自分のさらなる可能性を見つけるために必死になっていた。なぜならセンターに選ばれるのはAクラスの中から1人で、メインソングのMVに映る時間も必然的にA・B・C・D・Fの順で多くなるからだった。

 僕を含むCクラスの練習生はちょうど「あいだ」という評価。一番微妙で曖昧な評価であると僕は思った。認められていないような気がしたから余計に火がついた。ただ必死になって歌詞を覚え歌いながら踊ってみても、初めて見る韓国語の歌詞の意味も分からないし、発音が合っているのかも分からない。どうしようもないから、みんなの真似をして練習をしていると、同じCクラスの1人が僕のところに来て、分からないことがあれば手伝いましょうかと声をかけてくれた。みんな自分の練習に必死になっている中で、外国人の僕が大変なんじゃないかと気にかけてくれたのだ。

 僕はこの時、国と国の「あいだ」を越えた、心で通じる温かみを感じたのを覚えている。でもきっと僕だったら同じようにできなかったかもしれない。自分のことに必死になって、周りの子に手を差し伸べる余裕なんて当時の僕にはなかった。だから余計に心に響いた。

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写真はイメージです ©アフロ

最終24位という結果で番組を終え、脱落したが…

 中間評価の結果はBだった。ランクは上がった。でも嬉しくはなかった。センターまでとは言わないがAクラスに本気で行きたかったし、その分行けなかったことがとても悔しかったのだと思う。こうして最初のミッションを皮切りに、着実にひたむきに挑戦し、最終24位という結果で番組を終えることになった。結果的に言えば脱落したことになるが、この時の僕はとても清々しかった。それは順位という結果とは別に、本当の意味の「本気」を見つけ出すことができたからだと思っている。

 それまでの僕は、普通から外れた人生を歩む過程で、普通でありたいと思う気持ちが芽生え、その気持ちが大きくなるほどに、普通とは言われない職業「芸能人」への憧れも大きくなった。対照的な2つの気持ちが、自らをどっちつかずの曖昧なほうへと無意識に誘導し、曖昧な結果をもたらしてきた。普通でありたいと思うがあまり、自分を否定して何事にも「本気」になれていなかったのだ。