文春オンライン
韓国の芸能事務所と裁判→6600万円の賠償命令→所持金110円に…日本人K-POPアイドルが明かす「契約解除訴訟」の顛末

韓国の芸能事務所と裁判→6600万円の賠償命令→所持金110円に…日本人K-POPアイドルが明かす「契約解除訴訟」の顛末

『日本人が韓国に渡ってK-POPアイドルになった話。』より #2

2024/03/17
note

 2017年に韓国で放送されたオーディション番組「PRODUCE 101 Season 2」に唯一の日本人として出演し、日本人K-POPアイドルとしてグローバルに活躍してきた高田健太さん(29)。現在は、「KENTA・SANGGYUN」というデュオで日韓両国で活動している。

 ここでは、そんな高田さんが今年1月に上梓した初の著書『日本人が韓国に渡ってK-POPアイドルになった話。』(KADOKAWA)より一部を抜粋。2021年、契約問題を巡り所属事務所を提訴し、勝訴したものの、約6600万円の損害賠償の支払いを命じられた経緯を紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く)

日本人K-POPアイドルの高田健太さん

◆◆◆

ADVERTISEMENT

「自分たちが壊れてしまう」大きくなる会社への不信感

 夢を追いかけた末に待っていたのは、6600万円の借金だった。

 いつ頃からか、僕は会社に対する不信感が大きくなっていた。約束が守られない状況の中で、待ってほしいとだけ言われ続けていた。会社との信頼関係が良好であったなら、僕らは待っていたかもしれない。でも考えてみれば、練習生の時に、会社にあった僕の荷物も必ず返すから待っててほしいと言われたまま、まだ返ってきていない。

 会社が目先の利益だけを求める経営を続けた結果、数年間マイナスが続き、僕らは無給で働いた。なんとか改善しようと意見を出しても状況が変わることはなく、そんな経営が3年ほど続いた結果、最終的には給料の未払いで社員はいなくなった。多くのことは語れないが、僕が会社にいた5年間で会社に対する不信感がいい方向に変わることはなかった。そして僕らの精神的な状態も悪化していき、このままでは自分たちが壊れてしまうと思うようになった。

会社を出ることを決断した理由

 韓国の芸能界は、標準契約書という国が定めた契約書を基に、アーティストと会社が協議を行い契約をする場合がほとんどである。ただ練習生という立場で会社を相手に協議をするのはほぼ不可能なことで、場合によってはアーティスト側が不利になる契約を交わすところも実在する。契約期間も日本の芸能界とは違い、少し長い場合が多いのだが、それは会社がアーティストに対するケア、育成などの投資をする規模が大きいことから、相互に利益をもたらすためには長い期間が必要なのだと思う。

 ある時、僕らは会社を出ることを決断する。もちろん理由はいくつもあるが、会社が訴えられたことが1つの原因になったことは確かだ。百歩譲って、会社が訴えられても僕らには関係ないかもしれないが、社員がいない状態でグループを運営できるという保証はなく、僕らに対する説明を求めても答えてもらえない関係がクリーンな関係とは言えないだろう。お互いが歩み寄ろうと努力しない限り良好な関係は築けない。この時、自分のことは自分で守らなければ誰も守ってはくれない、と本能的に感じた。