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若者の話を「ただ黙って聞く」のはNG…上司が部下との会話で“やってはいけないコミュニケーション”

『静かに退職する若者たち 部下との1on1の前に知っておいてほしいこと』より #1

2024/03/29
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提案(1):「傾聴」のススメと3つのポイント

 まだわかりにくいと思うので、僕の方で「傾聴」のポイントを次の3つに絞ってお伝えしたい。

 それは、(1)興味を持って楽しむこと、(2)共感すること、(3)なるべく素でいること、だ。この3つは並列ではなく、順番も含めての提案となる。

 先に再三「積極的かつ能動的に聞く」と言ってきたが、その態度を具現化すると、(1)興味を持って楽しむ、となる。

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 具体的に考えてみよう。

 例えば1on1で、仕事にあたっての悩みや課題、社会人としての将来像などを共有したいとしよう。目の前の部下や後輩が、どんな考えを持って仕事をしていて、将来どうなりたいのか、といったことを知るのは、上司や先輩としてとても重要なことだし、ともに働く仲間としても関心のあるところだ。

 ただ、いきなりそんな話をしようとすると、どうなるか。

 最もありがちなリアクションは、抽象的な内容に終始されることだ。

写真はイメージです ©アフロ

あなたが興味を持って楽しむ

 部下としては、なるべく当たり障りのないフワッとした表現にとどめることで、否定や批判のされようがない状態を保てるし、強い印象を残すことも避けられる。

 今の若者は、それまでの数えきれない経験から、そうした態度をとることで相手が満足そうに頷くことを知っているし、「普通にまじめで優秀な人」というラベルを維持できることを学んできた。

 でも、やはりそれでは1on1の意義は大きく損なわれてしまう。なるべく具体的な話を引き出し、共有したい。ポイントは、とにかく具体的であることだ。

 そこで必要になるのが、あなたが興味を持って楽しむこととなる。

 例えば、「普段、家に帰ったら何をしているの?」と訊いてみたとする(その際は、まずは自分のことから話すように)。

「いや、普通に料理したり、動画見たりとか」と答えてくれたとする。

 ありがたいことに、キーワードを2つも出してくれた。どっちに食いついても構わない。が、せっかくなので、ここは難易度の高い「動画」の方をチョイスしてみよう。