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「飼い主を食べて生き残ったペット」はどのような目にあうのか…特殊清掃業者がやっているもう一つの仕事

source : 提携メディア

genre : ライフ, 社会

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死後のことを考えておくことが重要

人のためになる仕事をしたい。そんな酒本氏にとって、遺品整理や特殊清掃の仕事は自分を必要としてもらえる場であり、自分を役立てられる場なのだ。

酒本氏はつづける。

「僕としては、誰もが一度は人生の終わりの光景を想像しておくべきだと思っています。特に中高年はそうです。遺品をどうするのか、ペットをどうするのか、仕事の処理を誰に頼むのか、その費用をどうするのか。きちんと自分の死後のことを考え、やるべきことをやっておきさえすれば、周りの人はつらい思いをしなくて済むのです」

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人は他者によって生かされている。だからこそ、自分が死んだら終わりではなく、死後に周りの人たちに負担をかけないように、できることをしておくことが大切なのだ。遺品整理や特殊清掃の現場に身を置いているからこそ、酒本氏の言葉が重く響く。

インタビューが終了した後、私は酒本氏を食事に誘おうと思っていた。

だが、彼は急いで作業着の上にコートを羽織って言った。

「これから遺品整理の仕事が1件あるんです。今から行ってきます」

今日も深い悲しみを湛(たた)えた現場が酒本氏を待っているのだ。

石井 光太(いしい・こうた)
ノンフィクション作家
1977年東京生まれ。作家。国内外の貧困、災害、事件などをテーマに取材・執筆活動をおこなう。著書に『物乞う仏陀』(文春文庫)、『神の棄てた裸体 イスラームの夜を歩く』『遺体 震災、津波の果てに』(いずれも新潮文庫)など多数。2021年『こどもホスピスの奇跡』(新潮社)で新潮ドキュメント賞を受賞。
「飼い主を食べて生き残ったペット」はどのような目にあうのか…特殊清掃業者がやっているもう一つの仕事

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