飼い主が孤独死した場合、飼っていたペットはどうなるのだろうか。ノンフィクション作家の石井光太さんは「ペットが主人の遺体を食している場合、その処理が特殊清掃業者に委ねられることがある」という――。(第1回/全2回)

※本稿は、石井光太『無縁老人 高齢者福祉の最前線』(潮出版社)の一部を再編集したものです。

病院のベッドで死を迎える人は8割

日本では約8割の人が病院のベッドの上で死を迎えている。そこでは医療者や親族に見守られ、死後はすぐに死亡診断書が作成され、葬儀の手配が進められる。多くは1週間以内に火葬が終了する。

ADVERTISEMENT

写真=iStock.com/LightFieldStudios 病院のベッドで死を迎える人は8割(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/LightFieldStudios

だが、家で孤独死した人は異なる。発見が遅れれば遅れるだけ遺体の腐敗が進むだけでなく、人体の60%を占める血液を含む水分が体外へと漏れ出ていく。

寝室で寝たまま亡くなった場合は、そのような体液が布団を汚すだけでなく、畳やフローリングの下まで染みていく。

浴槽で亡くなったケースだと、湯の中で肉体が溶解してドロドロの状態になる。

首吊り自殺に至っては、頭部がちぎれて胴体と分離する。何も脅かそうとして書いているのではなく、すべて実際に起きていることなのだ。

警察は片付けてはくれない

一般的に、家でこのような変死体が発見されると、警察が呼ばれて事件性がないかどうか検視が行われることになる。

この際、警察は遺体を検案のために運び出すことはあっても、汚れた部屋の片付けは一切しない。それは警察の役割ではないのだ。そのため、床や壁にこびりついた体液、大量に発生した蛆虫(うじむし)、部屋に染みついた強烈な腐臭、散乱する頭髪などは放置される。

親族であっても、このような部屋を自力で元通りにするのは難しい。

そもそも、特殊な用具や薬品を使用しなければ悪臭や汚れを取り除けない。この時に呼ばれるのが、特殊清掃業者なのである。

「糖尿病で亡くなった人」はケトン臭がする

北海道で遺品整理や特殊清掃の事業を行っている企業「I’M YOU(アイムユー)」の代表取締役を務める酒本卓征(たかゆき)氏はこう語る。