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7000万円の売却益も…“マネーゲーム”の場と化した晴海フラッグの行く末

2024/04/02
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興味深い晴海フラッグの今後

 さて興味深いのは晴海フラッグの今後だ。たしかに坪300万円で都内他エリアではなかなか手に入らない広さの住宅を確保してずっと住み続けるのならば、悪くない選択かもしれない。だが、さすがに坪550万円。30坪(100㎡)で1億5000万円の中古住宅が続々サイトにでてくるとなると、これに食らいつく需要がどれほど見込めるのかは疑問だ。また投資家が買えばよい? と思っても無理筋だ。坪300万円であれば、利回り6%だが、550万円であれば利回りは3.27%に落ち込む。管理費や修繕積立金負担を考えれば利回りはさらに下がる。

 借手側からみても月額30万円から40万円も出せるなら都内の四谷や小石川あたりで十分借りることができる。そもそも駅から20分近くかかり、交通利便性では劣るこの物件を賃貸で利用しようとする借手はせいぜいバス直行で行ける新橋、虎ノ門付近の勤め人に限られるだろう。晴海フラッグでは賃貸棟が事業者により供給されるが、価格付けは坪あたり10,000円から13,000円程度、月額10万円台から20万円台が主流であり、まずはこちらを検討するのが筋というものだ。

 こうした思惑がうごめく晴海フラッグ、今後大量の売り物件と貸し物件がマーケットに出回ってくることは容易に想像できる。購入者の思惑は実現できるのだろうか。

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晴海フラッグ ©kawamura_lucy/イメージマート

一方、パリ五輪の選手村では…

 先日、今年開催されるパリ五輪の選手村を見学する機会があった。同地でも東京都同様に、選手村で活用した建物は、マンションとして一般に分譲される。パリの場合はリニューアルなどはせずにそのまま売却されるようで、すでに販売が始まっている。立地は晴海同様に微妙な立地で価格は市価より2、3割安いというのも同じだ。

 私から晴海の実情を告げてパリではどうかと聞くと、担当者は首をかしげて、「そのような動きは全くない。倍率も高くない」と言い切った。転売規制もサブリース規制も何もないのにパリでは個人がマンション投資して儲けようなどという動きはほとんどないのだという。

 国民性の違いといえばそれまでかもしれないが、パリでは古いアパルトマンが人気。日本人は相変わらぬ不動産神話を信じ、実際に儲かりそうな晴海フラッグに殺到する。都内は建築クレーンが立ち並び、ぶっ壊しては建て替える光景が目立つ。さてこんな風景がこれからの日本でいつまで続けられることだろうか。

7000万円の売却益も…“マネーゲーム”の場と化した晴海フラッグの行く末

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