空き家の問題ではボロボロになった戸建て住宅ばかりがクローズアップされるが、今後、新たな社会問題になってくるのが分譲マンションの空き住戸問題である。分譲マンションストックはすでに660万戸に達している。住宅総数が2018年で6240万戸であるから、日本の住宅の約1割がマンションということになる。
マンションは「仮の住まい」から「終の棲家」へ
民間で初めてマンションが分譲されたのが、1956年、東京都新宿区本塩町に建設された四谷コーポラス(2019年に建て替え)だが、以降65年にわたって供給、分譲されてきたマンションに、これから大きな社会問題が続出する可能性が高いのだ。
マンションが世の中にデビューした当時は、マンションという居住形態については、あくまでも戸建て住宅を購入するまでの「仮の住まい」といった概念が強かった。建物は安普請のものも多く、公団などが建設する団地よりも多少マシな住居として扱われていた。ところが、民間デベロッパーが多く参入してくるにつれ、建物設備仕様は大幅に向上、昭和の終わり以降は、マンションを「終の棲家」として住み続ける人が増えた。
何と言ってもマンションは戸建て住宅に比べて、管理面が圧倒的に楽だ。立地も都心部や、郊外でも駅に近い物件が多かったことから、特に90年代半ば以降の都心居住の流れに乗って人気を博するようになる。夫婦共働きがあたりまえになると、どうしても家を留守にしがちになるが、マンションは密閉性が高く、セキュリティも戸建て住宅に比べて安全性が高いことも高い評価を得ることにつながった。