年々、店舗数が増加しつつある「女性用風俗」。市民権を得るなか、女性用風俗で働くことに興味を持つ男性もいるだろう。しかし、安易に女性用風俗のセラピストになろうとすると、思いもよらぬトラブルにぶつかることも…。女性用風俗で働く男性たちの生態や、お客とのトラブル事情を漫画『僕は春をひさぐ~女風セラピストの日常~』作者として、数々の関係者を取材してきた水谷緑さんに聞いた。(全2回の1回目/後編を読む

漫画家の水谷緑さん。女性用風俗の取材を通じてわかった、そこで働くことの大変さとは? ©平松市聖/文藝春秋

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女性用風俗で働く男たちの生態

――セラピストの男性達は、どんなきっかけで女性用風俗で働き始めるのでしょうか。

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水谷緑(以下、水谷) 今はアルバイト感覚で気軽にスタートする人も増えているようです。大学生が「先輩に勧められたから」と軽い気持ちで応募したり、「ネタになると思ったから」という人もいます。女性用風俗の店舗は年々増加しており、セラピストの需要は多いのでカジュアルなノリで志望する人が増えています。

 女性が風俗で働くことに対して、言葉は悪いですが世間一般的に“風俗に堕ちる”というイメージがあるかもしれません。でも男性セラピスト達はそういう感覚がほとんどないようです。多くのセラピストは昼間は会社員など別の仕事をしているのですが、本業の同僚にバレたとしても、引かれることもありますが、興味深々で質問や相談をされることもあるそうです。

 女性用風俗で働く男性たちを描いた水谷緑さんの漫画『僕は春をひさぐ~女風セラピストの日常~』第2巻(講談社)

――男女で周囲の捉え方の差が大きいのですね。しかし、なかには問題視されるケースもあるのでしょうか。

水谷 副業禁止の規定のある企業では問題になると思います。ある男性は、女性用風俗店のホームページに掲載されていたプロフィール写真から会社にバレそうになったそうですが、顔の部分がボカしてあったので、「これは僕じゃありません!」と上司に言い張ってごまかし通したそう。すぐに写真を消すと怪しまれるので、「敢えて少しの間残しておいた」と言っていました。

 実は結構多いのが、身内に告げ口されるパターン。セラピスト達はSNSで営業活動をするのですが、それを兄弟などに見つかって勤め先や奥さんに密告されたという話をよく耳にします。何だか家族の闇を感じますね。

 別のセラピストは、奥さんに内緒で働いていたところ、街で客と歩いているのを奥さんの身内に見られて、不倫を疑われたことからバレたそうです。

既婚男性が“妻公認”で働く事情

――家族や恋人にバレたら修羅場になりそうですね。

水谷 婚約者に知られて、婚約破棄になったという人もいました。また別のケースでは、彼女に気づかれて揉めていたところ、彼女がセラピストの実家に電話をして「お宅の息子は女性用のデリヘルで働いている」と暴露したそうです。家族それぞれ反応が違っていて、お兄さんは好奇心が抑えられない様子、お母さんは泣いていて、お父さんは本当にピュアに「デリヘルって何だ?」と聞いてきたそうです(笑)。

――奥さんや彼女公認で働いているセラピストもいるのですか?