女性用風俗セラピストの仕事を指して、「1年続けられたら長いほうです」と語るのは漫画家の水谷緑さん。そこで働く男性セラピストのなかには女性客のプレッシャーに潰されて辞めたり、SNSで誹謗中傷を書かれたりする人も…。インタビュー後編では、女性用風俗セラピストの厳しい仕事環境をさらに深掘りした。(全2回の2回目/前編を読む

漫画『僕は春をひさぐ~女風セラピストの日常~』を執筆するなかで、数々の女性用風俗関係者を取材してきた、漫画家の水谷緑さん ©平松市聖/文藝春秋

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女性用風俗の怖い話「依存する客」

――本作では、客がセラピストの名前のタトゥーを入れてくるエピソードがありましたが、なぜそこまでのめり込んでしまうのでしょうか?

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(画像:『僕は春をひさぐ』より)

水谷緑(以下、水谷) 人によるとは思うのですが、自分に自信のない客が多いと聞くので、優しくされるとハマりやすいのかもしれません。

 例えば、すごく綺麗でモデル経験のある客の容姿を褒めると、「20歳の頃と比べれば今の私なんて……」と自信喪失しているそうです。特に、40代の女性は「私なんかに奉仕してもらってすみません」と、卑屈になってしまう人が多いと聞きます。

 肌と肌が触れ合うことも、相手を好きになりやすい要因だと思います。客がセラピストに依存するようになると、XのDMを送る頻度がどんどん多くなります。返信が少しでも遅れると怒り出したり、驚く程長文の悩み相談DMを送りつけたり、要求がエスカレートしていきます。

――客は、どんなきっかけでセラピストにハマってしまうのでしょうか。

水谷 リピート客がほしいセラピストが、「君だけ特別だよ」と言って、禁止されている挿入行為を行うことがあります。しかし、後日セラピストが勃たない日があると、客がショックを受けて泣き出してしまったそうです。「勃つまで待ってるから!」と何時間も責められ生き地獄だったそうです。そのセラピストはプレッシャーに押し潰され、結局店を辞めたそうです。

 また、その時はお互いに合意の上で挿入行為をしたとしても、セラピストが違う女性の名前でメッセージを送ってしまったりした時に、激怒した客が「挿入された」と店側に告げ口するケースがあります。ときには「無理矢理やられた」と嘘を吐かれたり、「あのセラピストは違反行為をする最低な奴です」と、SNSやインターネットの掲示板に書き込まれ、誹謗中傷されたりすることもあるようです。

(画像:『僕は春をひさぐ』より)

――トラブルになったら店はどう対処するのですか?

水谷 客が依存しているときの距離の取り方は難しく、少しずつ連絡の頻度を減らしたり、店側に予約を入れないようにしてもらうそうです。

 身の危険を感じる場合は一時休業してほとぼりが冷めてから源氏名を変えて復帰したり、経営者の知り合いの店に移籍することもあります。

女性は男性に「チェンジ」と言えない?

――セラピスト側が客の恋心につけ込んで、大金を要求するようなケースはあるのでしょうか。

水谷 ホストクラブは1本数十万円するシャンパンを何本も入れてもらうことができますが、女性用風俗は1人のセラピストが1日に入れられる予約人数は最大5人くらいです。時間当たりのコース料金が決まっているので、大金を稼ぐことは難しいと思います。

 ただ、「空(カラ)予約」をするセラピストは一部にいます。店の月間ランキングを上げたいセラピストが、常連客に頼んで予約を何件も入れてもらい、実際には会わないという方法です。でもセラピスト側が「お金は後で返すから予約を入れてほしい」と言っていたのに、実際にはお金を返さなかったりして、トラブルに発展することもあります。

――セラピストが好みに合わない場合は、男性用風俗と同じように「チェンジ」することは可能なのでしょうか。