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「これで干されたら仕方ない!と本気で思えた」SMAPと過ごした20余年…放送作家・鈴木おさむが感じた「事実を記すことの大切さ」

2024/03/31
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 1996年にスタートした「SMAP×SMAP」(フジテレビ系)の制作に20年以上携わってきた、放送作家の鈴木おさむさん。「新しい地図」の3人によるネット番組に出演した際に、稲垣吾郎さんが「同じメンバーみたいな感じだった」とふりかえるほどSMAPと長い時間を共に過ごし、深い信頼関係を築いてきた。

 このたび上梓した新刊『もう明日が待っている』(文藝春秋)では、国民的アイドルグループの知られざる物語が描かれている。ここでは「週刊文春」2024年4月4日号より、鈴木さんの連載「最後のテレビ論」最終回を特別公開。3月31日をもって放送作家を引退する彼が、いま思うことは――。

鈴木おさむさん ©文藝春秋

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 半年間、連載してきた「最後のテレビ論」ですが、今月31日で僕が放送作家を辞めるため、今回が最終回となります。

 始めるときから、今まで数々の人が書かれているテレビのエッセイとは違う物にしようと、かなり意識して書いてきました。

 なるべく自分の目で見てきたことと、そしてそこに関わる人を「実名」で伝えることにこだわりました。さすがに「週刊文春」に自分の名前が出るとざわつくようで、業界の方からよく連絡をもらいました。最後の最後に自分にしか書けないテレビエッセイが書けたかなと思っています。

テレビへの遺言として書き切った『最後のテレビ論』

 これまでここで連載した23本と、新たに書き下ろした12本を加えて、『最後のテレビ論』という一冊の本として刊行します。

 新たに加えたものは、12月22日に、文藝春秋の「缶詰」部屋に24時間缶詰になって書きました。おそらく往年の作家さんも缶詰になったであろうその部屋で、自分の32年間を振り返り、ほぼ寝ずに書き上げました。

『最後のテレビ論』(文藝春秋)

 テレビがとてもしんどくなっていく状況の中で、僕のテレビへの遺言として書き切れたと思いますし、ある意味、90年代00年代を中心としたテレビの歴史書(狭いですが)にもなっていると勝手に思っています。

 そんな『最後のテレビ論』と共に、もう一冊刊行する本があります。『もう明日が待っている』という「小説」です。

小説を書くことを決意した理由

 2022年12月に発売になった「文藝春秋 創刊100周年記念号」に掲載されて、何かと話題と問題になった「20160118」というタイトルの小説があります。2016年1月18日にフジテレビの「SMAP×SMAP」内で放送されたSMAPの謝罪放送をテーマにしたもので、あの謝罪放送の裏側で何が起きていたのかを、「僕」の目線から、あくまでも「小説」として書きました。

「文藝春秋」の編集長だった新谷さんからオファーをされたときは、正直、「書けるわけないだろ」と思ったのですが、新谷さんは、僕が帰る直前に、知っている人が「記す」ことの大切さ、それを残すことの大切さを語りました。

 何日も何日も悩んで書くことを決めました。書くことにより、番組と彼らを応援してくれていた人に「一滴の希望」を持たせたいなと思ったから。そして放送作家としてやってきた僕が「作家」として、「記して残すべきだ」と思ったからです。

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